「では早速だが、死んだライフアイゼンの評判はどうだった?」
「よくわかりません」
「得意誰かと仲が悪かったとか、そういうところは?」
「さあ、どうでしょうか」
これでは協力の意味がない。その生徒は無論ラインハルトに反抗や非協力の意思を抱いているわけではなく、およそ他者の人間関係に関心が薄いようであった。数字や資料のほうに現実感覚を密着させる型の秀才であるのかもしれない。ラインハルトが舌打ち寸前の表情になって沈黙したので、キルヒアイスが変わって質問した。
「では逆に、彼と仲が良かったものは?」
「私です」
「そうそれなら君の眼から見て、ライフアイゼンはどんな人間だった?」
生徒の不得要領な顔つきを見て、キルヒアイスは言い直した。
(解説)
ラインハルトとキルヒアイスは自らの母校で起きた殺人事件の解明の命を受け、調査を開始した。捜査協力者の一人を校長が勧めてくれた。それはモーリッツ・フォン・ハーゼであった。最初はラインハルトが質問をしていたが、埒が明かなくなり、イライラしていたときに、キルヒアイスが代わって質問をした。ハーゼは言われたことには適格に答えるタイプであって、捜査の強力をするという割には大して役には立つようには見えなかった。そこで、質問者と、質問内容を変えた。そのことによって、別の答えを引き出すことができた。
質問の仕方には色々とある。例えば相手が言ったことに対して「〇〇とはどういう意味でしょう?」として、相手の発言をより明確化することができる。また、「あなたの言った理由を説明してください」として、理由や証拠を引き出すことができる。さらに「どのようない影響が出るのでしょう?」といって、相手の視点や観点を知ることができる。
加えて、相手に考えさせるような質問をしよう。抽象的な発言に対しては、「例えるとどんなことですか?」と聞いてみる。「以前はどうだったのでしょう?」「これからはどうしたいのでしょう?」等、時間軸でヒアリングすることもある。「なぜ」「どうして」という理由を尋ねることも、相手の考え方を深く知るための質問である。
どんな人に対しても、多面的に質問をする。切り口を変えることで、相手の内面にある真実を浮かび上がらせることができるようになる。質問上手は聞き上手である。
(教訓)
〇質問内容を変えると、真実を引き出すきっかけになる。
〇質問上手は聞き上手。相手が詰まっていたら、質問の切り口を変えろ。