「さようで。経済活動その他について、帝国に対する協力及び援助の比重を重くします。・・・」
「すると、帝国と同盟との勢力の均衡が崩れよう。それをどう利用するのか」
「ですから、ラインハルト・フォン・ローエングラム侯爵に全銀河系を統一させ、然る後に彼を抹殺してその資産をすべて手中に収める。それでよろしくはありませんか」
・・・
「しかし、ローエングラム公にしてもオーベルシュタインにしても、全知全能というわけではありません。乗じる隙はありますし、なければつくることもできるでしょう」
ローエングラム公が全能であれば、昨年の秋、自身が暗殺者に狙われることも、腹心のキルヒアイス提督を失うことも、ともになかったはずではないか。
「権力にしろ、機能にしろ、集中すればするほど、小さな部分を制することによって全体を支配することができますからな。来たるべき新王朝においてローエングラム公、いや皇帝ラインハルト一人を倒し、神経回路の中枢を抑えれば、それが即ち全宇宙の支配に直結するという次第で・・・」
(解説)
自治領フェザーンにおいて、地球教の主教デグスビイと自治領主ルビンスキーが陰謀を巡らせていた。端的に言えば、帝国に加担し、同盟を吸収してしまい、その後、帝国の元首ラインハルトを亡きものにして、銀河を手に入れる、という壮大な話である。
二大勢力の影で、第三極が暗躍し、実はキャスティングボードを握っているというのは良くある話だ。そのため、二大勢力が争いを強めているときは、第三極で誰か得をする奴がいると思って正解である。フィクサーは表には出てこない。
リーダーにも専制型と協調型がおり、スピードを要する意思決定時には専制型リーダーの組織の方が機能する場合がある。それでは危機的状況の時に、権限を集中させることが良いのか、というとメリットとデメリットがある。メリットは即座に行動できるため、被害を最小限に抑えたり、効果を最大限にする可能性がある、デメリットはリーダーの意思決定が誤れば、組織全体が瓦解する危険性がある。
しかも、権限を一人に集中させてしまうと、その権限を奪取しようとする者からすれば、中枢を抑えるだけで済む。合理性に乏しいようには思えるが、権限を集中させない方が、結果として、組織全体にとっては望ましいことになる。不都合なリーダーが取り替えやすいという意味では。しかも、不測の事態が生じて、望ましくないリーダーがなった時への対処としては。
(教訓)
〇二大勢力に目を囚われず、第三極の動きを把握しておけ。
〇専制型、協調型それぞれのリーダーシップにメリットとデメリットがあることを知って置け。