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ビジネス上、不利になる点を必ず分析し、解決して先に進め

「今回の遠征には三点の不利がある。第一点は時間の不利である。準備の時間が不足している。必勝を期すなら、まず調査と情報分析に時間をかけねばならないが、それは敵に防戦準備に必要な時間を余分に与える。この避けがたいパラドックスを、どう整合させるのか。第二には地理上の不利である。わが軍は一万光年の距離を遠征しなくてはならないが、大軍の補給を考えただけでも、その困難は目に見える。加えて、敵は恐らく精密な星図を持ち、地理に通暁しているであろうのに、わが軍は不案内な敵地で戦わねばならないのだ。そして第三に人的資源の不利である。このように重大かつ困難な遠征の指揮を、熟練した将帥にではなく、戦争とカード遊びの区別もつかない苦労知らずに驕慢児に委ねるとは何事か。公私の差をわきまえず、国運と家運を同一視、持って国家と人民を害することのないよう、本職は切に希望するものである」

(解説)
帝国軍が同盟領に初めて攻め入るときに、御前会議を行い、皇帝フリードリヒ三世の三男、ヘルベルト大公が遠征軍の総司令官に任命された。この遠征は、皇帝が新たな後継者候補に武勲の箔を付ける意味合いもあった。しかし皇帝の異母弟で帝国軍上級大将の階級を持つバルトバッフェル候ステファンが、この御前会議において、当該遠征計画に批判を加えた。

ステファンの指摘は以下の通りである。
(a) 時間の不利:準備不足、調査と情報分析に時間をかけるべき
(b) 地理上の不利:ロジスティクスが困難、地理情報の不足
(c) 人的資源の不利:熟練のリーダーではない
そして、今回の遠征はなによりも、三男に箔をつけるという私的理由である。

こんなバカいるかよ、と思うかもしれないが、起業の世界ではこんなのばかりである。調査や情報分析など、全く行っていない。そもそもマーケットの事情がよくわかっていない、そして起業したいという気持ちで起業してしまって、今までの経験も大したことはない。少なからずマネジメント経験もない。こんなのでよく起業する気になったなと思うものである。まずは初めてから、柔軟に都度対応していくという方法であるならわかる。そうならば、初期投資を少なくするなどの工夫も必要だ。

こういったいくつかの不利がわかっていれば、それに対処しようがあるが、不利すらも感じていない。やればうまくいくと思っているのだろうか、起業家ではなく単なるギャンブラーには絶対に近寄ってはならないのだ。

(教訓)
〇不利を分析し、それを解消してから、ビジネスに取り掛かれ。
〇不利を知ろうとしない経営者には近寄るべからず。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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