「いくらでも優秀な敵というものはいるものだな」・・・
「あのまま、しつこく攻撃を続けてくれればよかったのだが、さすがに帝国軍の双璧とも言われる男は違う」
・・・シェーンコップが、遠慮のなさすぎる質問をした。・・・艦隊どうしの対局になったとき、ロイエンタールに勝てるか、というのである。
「わからない。先立って戦ったケンプは、ロイエンタールより用兵の柔軟さで劣っていたはずだが、それでもかろうじて勝てたのだし、運次第でどう転ぶか・・・」
「期待外れのことを言わんでください。私は、いつかも言いましたが、あなたはラインハルト・フォン・ローエングラムにだって勝てると思っているのですから。その部下ごときに勝てなくてどうします」
「君が思い込むのは自由だが、主観的な自信が客観的な結果を導き出すとは限らないよ」
(解説)
ヤンとシェーンコップの会話である。部下としては、「勝てるか、その根拠は」と聞きたくなるが、リーダーとしては、「運次第だ」と言いたくなる気持ちにもなる。それだけ、相手が強敵だということだ。
経営者の中には、自信が滅茶苦茶ある奴がいる。自信があるのはいいことなのだ。でもその自信には根拠が必要だ。自信がある奴に限って、結果が出ない奴が多い。なぜならば、その自信とは、ほとんどが自分で勝手にそう思っているだけからだ。ここで言う自信はむしろ思い込みに近い。自信は持つべきだが、思い込みは危険だ。
私の考えた発明は、天才的だ、画期的で、世界初だ。と言う台詞は、よく聞く。そうであれば、さぞや億万長者になっているんだろうな、と思うのだが、借金まみれの奴ばかりだ。なんでそんな画期的な技術を持った商品が売れないのかを尋ねてみると、出資をしてくれないんだ、という。その理由は、優れた投資家に出会えない。優れた技術のため、会社の経営権を乗っ取られたくない。そのため、商品化がなかなかできない、という。あと、機密だから、話せないという。
金だけ出して、口を出さない、奇特な人間なんていないし、そもそも技術を盗まれたくないから、核心を話さなかったら、凄い技術かどうかもわからないだろうと思う。まあ、大抵、思い込みであって、大した技術ではないことがほとんどである。
むしろ成功する経営者は、自信を持っているが、かなり慎重である。客観的な結果をもたらすものは、客観的な自信でしかない。
(教訓)
〇思い込みと自信をはき違えるな。
〇客観的な自信は客観的な結果に結びつく。