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謀反を起こす奴は、経営者としての素質有り

「ユリアンはいい素質を持っている。」
嬉しそうな表情になるヤンを、コーネフは皮肉っぽく眺めやった。
「だがな、ヤン。ユリアンがいくらいい声で歌えるといっても、いまのところそれはあんたの手のひらという舞台の上に限ってのことだ。あんたもとうにご存じのことだろうがね」
ヤンが返答したくないように見えるので、ボリス・コーネフは口を付けぬまま紅茶カップを受け皿に戻し、腕を組んだ。
「師に忠実すぎる弟子が師をしのぐことはありえない。このままの状態で行けば、ユリアンはあんたの縮小再生産品にしかなれないだろうよ。ま、それでも十分にたいしたものではあるが・・・」
「ユリアンは私よりずっと素質は上なんだ。心配には及ばないよ」
「それなら問うが、あんたはどのような師についたというんだ?いや、あんだだけじゃない、皇帝ラインハルトにしてからが自分で自分を育てたはずだ。素質はあんたより上でも、育ちようによってはあんたに及ばないことが十分にありうるさ。実はちょっと気になっていることがあってな」
地球で入手した光ディスクを、ユリアンは自ら解析しようとはしなかった。そのまま封印してヤンの元へ届け、判断と分析をヤンに委ねようとしたのだ。それは忠誠心の表れとしては申し分ないものだが、自分ならまず自身でディスクに目を通しておく。そうすればディスクを失っても、彼自身が生きた資料となり得るし、情報の一定量において上位者をしのぎ、自身の存在価値を高め得るのに。
「ユリアンはもう少し謀反気を持つべきだ。謀反気は独立独歩の源だからな」

(解説)
ヤンもラインハルトもだが、彼らにはこれと言ったメンターはいなかったが、その環境に置かれることによって、自ら育ってきた。あるいは反面教師だらけだったのかもしれない。本当の実力者であれば、自分で自分を育てられると思う。しかし、世の中の大半は、そこまでの実力者ではない。だから、優れた師がいてくれた方が、育つスピードは速い。どうしても引き上げてくれる人がいた方がいい。

優れた師は、優れた機会を弟子に与えることができる。優れた機会であるからと言って、その環境は温室ではない。逆にブラック企業と呼ばれる、土日祝日もない、その日に帰れない会社かもしれない。でもブラック企業だからと言って、上司が優れていないとは言えない。そのような悪い環境の方が、人が育つ可能性もないわけではない。

世の中の大半の人は、休みが取れない、その日に帰れないという環境をしてブラックと呼んでいるようだが、それだけ仕事が多くて、自分を鍛えられる環境はない。最速で自分が育つ。ブラックのブラックたるゆえんは、人間扱いをされず、メンタルをズタボロにされるからだと思う。そしてその環境に耐えられるメンタルを持っていれば、その悪い環境が反面教師になり得る。

本当の実力者は、どんな環境でも、自らを育てることができる。少なくとも経営者はそうでありたいものだ。

(教訓)
〇環境が人を育てる。
〇悪い環境だからと言って、育たないわけではない。
〇休みが取れず、その日に帰れないブラック企業は、それだけ仕事が多いことを意味するから、育つために悪い環境とは言い切れない。
〇本当の実力者は、どんな環境でも自らを育てる。場合によってはクズ上司を反面教師として自らにプラスにする。
〇自分の権限を奪い取りに来る、ぐらいな奴の方が育て甲斐があるし、経営者になる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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