ラインハルトの戦法は、あまりに壮大で、あまりに華麗であるので、他人の目には超法規的な魔法を駆使しているかのように見える。しかし、けっしてそうではない。彼は戦術家であると同時に、いやそれ以上に戦略家であり、戦場に到着するより先に、勝利を収めるのに必要なことは、全てやっておくのだ。
ラインハルトの過去の戦いは、どれほど華麗に、また奇想天外に見えても、その底には論理的整合性が一貫しており、さらに戦略上の保証が成立していたのである。
ラインハルトは「勝ち易き勝つ」男だった。だからこそ、ヤンは、彼の偉大さを認めるのである。「勝ち易き勝つ」とは、勝つための条件を整えて、味方の損失を少なくし、楽に勝つことを言う。人命が無限の資源である等と考えている愚劣な軍人や権力者だけが、ラインハルトを評価しないであろう。
(解説)
真のリーダーとは、戦う前に既に勝つための準備を済ませておく。やってみないと分からないといっているうちは、真のリーダーではない。それは単なるばくち打ちだ。もちろん、不確実性の現代においては、やってみないと分からないことだらけであって、やってみた後に改善して、成功に導くのが現実である。しかし、なんでもかんでもやってみるというのであれば、ただの馬鹿である。やる前に、その市場調査を十分にしておくべきだ。勝算がある場合に事業を開始すべきだし、そもそも、売上や費用を十分に計算して、最低でも収益が回る計算はしておかなければならない。わざわざエクセルシートで収支表を組み立てなくてもいいが、頭の中ではスプレッドシートを組み立ておくのが、リーダーとしては当たり前だ。
うまくいくからやる。この技術は優れている。消費者はこんなサービスを待っていた。こういう奴に限って、単なる直感バカなのだ。いわゆる思い込みが激しいバカと言っておこう。
こういう思い込みバカに限って、自分にお金を託してくれればうまくいくと思い込む。こういう奴にお金を託すとどうなるか。全て使い切られて終わりだ。次に言う事は、自分は悪くない、技術は優れていた。これを実現できなかったのはエンジニアが悪い。部下が悪い。業者が悪い。理解していない消費者が悪い。社会が悪い。政府が悪い。はてまた、資本が小さすぎる、もっとたくさん調達していればこんなことはなかったと言い出す。無限の資産があると思い込むバカ、と言った感じだ。
(教訓)
〇始める前に成功が描けていないビジネスはやるな。
〇やってみなければわからないという経営者は、単なるばくち打ちである。
〇人もお金も、資源は有限だ。その中でできることをするのが経営者だ。人材は自分の想定通りの能力を持っていて、資本も無限でないからうまくいかないといい訳をする奴は、経営者ではない。単なる乞食である。