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短期決戦では目標を一つに絞れ

肉薄したヤン艦隊から複数の通信波が放たれ、「健康と美容のために、食後に一杯の紅茶」という、正常とも思えない数語をコンピューターが受領した瞬間、全ての防御システムが無力化してしまったのである。・・・
要塞の防御システムを無力化するキーワード。それがヤン・ウェンリーの奇術の種であったのだ。1年前、要塞を脱出する時、その種を撒いて行ったのだ。

「雷神のハンマー、封印解除」
「ロシアン・ティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で」

(解説)
イゼルローン要塞の最大の脅威は、「雷神のハンマー」という大量破壊兵器だ。そこで、ヤンは、以前、ロイエンタール艦隊の攻撃によって、イゼルローン要塞から退去し、バーミリオン星域にいたラインハルトを撃破しに行くときに、置き土産をおいて行った。それが、防御システムの無力化である。ヤンは雷神のハンマーを無力化し、内部部隊を侵入させ、逆に雷神のハンマーを入手し、ルッツ艦隊の反転を妨げた。一割の艦隊が、雷神のハンマーの攻撃によって消滅した。もし負けるなら負けるで、何か将来につながることをやっておけ。いつかはそれが役に立つときがくる。

雷神のハンマーだけを無力化するだけでは、イゼルローン要塞を攻略することはできない。そのため、ヤンは(と言っても今回の作戦ではエル・ファシルで指示をしていただけだが)要塞の全部を制圧するのではなくて、防御システムを管理する場所の制圧のみを主な目的とした。雷神のハンマーを抑えれば、外に出たルッツ艦隊を要塞に近づけさせないことができる。もう一つは、雷神のハンマーというイゼルローン要塞の、いわゆる必殺兵器を抑えることで、敵の兵隊のモチベーションを一気に下げることができる。これがあれば我々は勝てる、それが逆にこれがないために我々は勝てないと思い込んでしまう効果があるのだ。

内部に侵入して要塞全土を制圧することは、時間的に不可能に近い。そのために、難易度が高く、しかも時間的に制約がある場合には、たった一つの事だけを達成すればよいと決め、そのたった一つのことが、敵の最大の強みをせめて、こちらのものにすればよいということなのだ。

時間的制約がある場合に、より多くの事をこなそうとしても失敗する。たった一つだけのことをやらせた方が、部下は効率的に動く、あれもこれもやらせるのは失敗する。そのたった一つだけのことが、相手にダメージを与える、その「たった一つのこと」とは何なのかを経営者は考えつくさなければならない。いわゆる、相手の強みを無効化し、自分たちに強みを持たせる。「強み」に絞ればいい。

往々にして戦略のない経営者は無駄な事ばかりをやる。そして、上手くいかずに終わる。全くもって時間の無駄である。経営者はこれさえやっておけば最大の成果が出せるという目標を確実に用意して、部下に示すのが仕事である。もちろんそれを見つけるまでに試行錯誤はあってよい。経営とは「強み」を探すことから始まるのだ。

(教訓)
〇失敗しても、何かをやっておけ。いつか有効になるときがくる。
〇時間的な制約があるときは、数多くの事をやるな。一つの目標だけに絞れ。そしてその一つの目標が決定的な結果を導くことを探し、その目標を部下に示すのが経営者の役目である。
〇経営は「強み」を探すことから始まる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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