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決め手を欠く場合の対処法

「四週間だ。四週間耐えれば、ヤンが帰ってくる」
キャゼルヌは強調した。自分自身も含めて、将兵を鼓舞するには、これしかなかった。・・・
今一つ、キャゼルヌが強調したのは、「ヤンが不在であることを敵に知られてはならない」ということであった。これを知られれば、敵はかさにかかって攻勢を強化するであろうし、最悪の場合、ヤンの帰路を阻んで彼を捕虜とするという手段に訴えるかもしれない。
「基本方針は、ヤン司令官の帰還までイゼルローンを守り抜くこと、戦術的には防御を中心とし、敵の攻勢に随時対応する」
会議室でキャゼルヌが言うと、幕僚たちは顔を見合わせた。独創性と積極性に欠けることが不満ではあるが、他に選択の余地がないことも、また事実である。

「防御に専念するにはけっこうですが、あまりに消極的だと、かえって敵の疑惑をまねくことになりませんか」
若いアッテンボローが言うと、シェーンコップが応じた。
「それはそれで、ヤン司令官の策略かもしれないと敵に思わせることもできるさ」

(解説)
ヤンがいないということは、サッカーに例えれば、エースストライカーや司令塔が不在というところだ。通常、このような緊急事態に陥れば、普段のサッカーを継続するわけにはいかない。堅実にかつ、どちらかと言えば守備的に、勝ちよりも引き分けを目指すようなサッカーにならざるを得ないだろう。戦術的に守備的だといわれようと、勝つことは無理でも負けなければいいという発想に立てば、責められるいわれもない。まさに引き気味に守り、敵の攻勢に随時対応するということになる。

ビジネスにおいても、どうしても決め手に欠けるという時はある。会社にキラーコンテンツや差別化商品がないような場合、堅実にコツコツやらざるを得ないならば、薄利かもしれないが、ばくちを撃つべきではない。

部下から、ヤンがいないことがバレる可能性を問われたが、ヤンは敵から策士と思われているから、守備的であることが何らかの戦術だと思ってもらえればいい、相手が消極的になったり、考えすぎて自滅することもある。

野球で言えば、今は亡き野村監督は策士だったが、何もしてこなくても、何かしてくるのではないかと敵をかく乱することができたという。こういうときのために、普段は策を弄しておくのが良いのかもしれない。

(教訓)
〇決め手に欠ける場合は、ひたすら守りに徹する必要もある。コツコツ薄利を拾うビジネスである。
〇普段から策士だと思われていれば、何もしないことも戦術の一つになりうる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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