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戦略と戦術を混同してはならぬ

かつてユリアンはヤンに勧めてみたことがある。
「提督がこれまで経験してこられた戦闘の数々をまとめて、戦術理論書をお書きになったらいかがですか」
ヤンは勢いよく頭を振ったものだ。
「そいつはダメだね。戦略には法則があるし正しい姿勢もあるが、戦術の展開は時として理論を超える」
さらに彼は持論を展開した。
「戦略は正しいから勝つのだが、戦術は勝つから正しいのだ。だから真っ当な頭脳を持った軍人なら、戦術的勝利によって戦略的劣勢を挽回しようとは思わない。いや、正確には、そういった要素を計算に入れて戦争を始めたりはしないだろうよ」

(解説)
戦略と戦術を混同している経営者は多い。一言で言えば、戦略は「目的を実現するための進むべき方向性やシナリオ」、戦術は「戦略を実現するための手段」のことである。前者は会社の進むべき方向は何か、英語で言うWhat、後者はやり方、つまりHow Toである。

まずは、目的を明確にしたうえで、その目的を達成するためにどのようなシナリオで進めるか、そして具体的にどのような手段で、そのシナリオを実現するか、と言う順番で考えることになる。つまり、目的設定→戦略→戦術である。

仮に年商1億円の会社を作ることを目的設定にした場合、それをどのように達成するのか、例えば、100人近く収容可能な大箱で、人通りの多い場所に出店するのか、中くらいの箱を数店舗構えて達成するというのが戦略であろう。そしてどのようにして集客をするのか、マーケティングプランを立てて実践するのが、戦術になる。

このような場合、飲食店で年商1億円の会社を作ることは、成功者もいるし、理論的には可能と思われる。これは法則や正しい姿勢であろう。例えば小箱一店舗で回転数を10回転以上で年商1億円を達成する、というのであれば、通常の思考では不可能な感じだ。つまり法則に反し、正しい姿勢ではない。もちろん、それを覆す大いなる戦略、ビジネスモデルを持っていれば、それは可能になる。それを戦術レベルで考えると非常に打開するのが難しい。

とはいえ、今までの実績によっては、いきなり大箱を構えるだけの資金調達が不可能であろうし、自分の現状を把握する事が大切である。年商1億円まで1年間で達成できる人もいれば、何年かかかる人もいる。現状を把握することで、その人に合わせた最適な戦略を導き出すことができるだろう。

日本にとっては、パールハーバーの攻撃が戦術であったろうが、これで戦略的劣勢をひっくり返すことはできないわけであり、なんで戦争を始めたんだろう、と思ってしまう。まあ、空気だったんだろうが・・・。

(教訓)
〇戦略と戦術を混同してはならない。
〇戦略的劣勢は戦術的勝利によって挽回できるようなものではない。戦略的に優位に立てるように準備せよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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