ラインハルトはフェザーン回廊通過と言う方法によって戦術レベルにおいて難攻不落であったイゼルローン要塞を戦術レベルにおいて無力化してしまったのであり、ラインハルトが単純な軍人ではありえないゆえんがそこにこそあるのだ。・・・
戦場の勇者は多いが、戦争それ自体をデザインしうる戦略構想家の、何と希少なことであろう。
「私も言い過ぎたようだ。非礼は詫びる。だが、いずれ熟した果実は落ちる。今無理をすることはないと思うのだが・・・」
「では、イゼルローンに対して攻撃を加えるのをやめ、包囲するだけにとどめますか」
「いや、ルッツ提督、そうもいくまい。敵に時間を稼がせることになるからな。何を考えているにせよ、準備に専念させてやることもなかろう」
「・・・つまり、嫌がらせの攻撃をする、と?」
「露骨すぎるな、その表現は、あらゆる布石を惜しまぬ、ということにしておこうか」
(解説)
私こういう仕事ができます。こういう資格を持っていました。こんな学歴を持っています。と個人レベルの能力を語れる人物は多いが、ビジネスモデル(儲けられる仕組み)を組み立てられる人間は数少ない。前者はサラリーマンと言う種族で、後者は起業家、あるいは経営者と言う種族になる。
そもそも戦場の勇者に毛が生えた程度の経営者もまた多い。ほとんどが、別の会社の業務委託レベルで、他の会社がやっているよりも、安くやります、くらいのセールスポイントしかない。まあ、セールスポイントに全くなっていない。
新しい商品やサービスも、価値創造になっていれば、新しいマーケットにはなりうるが、大抵自己満足でしかない。偉そうに技術を語るが、だから何なんだ、の一言でしかない。
相手の出方がわからないときには、焦らせてみるのも良い。ルッツが「嫌がらせの攻撃をする」といい、ロイエンタールが「あらゆる布石を惜しまぬ」と言い換えているが、相手に十分な時間を与えてしまうと、競合他社に顧客が奪われる結果にもなりかねない。
(教訓)
〇ビジネスモデルを組み立てられるのが起業家である。
〇私こういう仕事ができます、と言う経営者の多いこと。それは起業家とは言わない。
〇顧客からの返事が来ないときは、焦らせて、判断に時間をかけさせるな。但し、どうでもいい顧客は無視していい。返事が遅い顧客は、無視がベストな連中が多い。優れた人物は意思決定が早い。