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相手の期待を上回る営業トークを

「・・・つまり、イゼルローン要塞の前面に、それに対抗するための拠点となるわが軍の要塞を構築するというのか」
「さようです、閣下」
重々しく、科学技術総監はうなずいた。明らかに称賛を期待していたが、彼が若い帝国宰相の秀麗な顔に見出した者は、苦々しい、失望の色であった。わずか15分でも、時間を浪費したと言いたげなラインハルトである。
「構想としては悪くないが、成功するには一つ条件が必要だな」
「それは?」
「わが軍がそれを構築する間、同盟軍の奴らが黙ってそれを見物し、けっしてそれを妨害しない、という条件だ」
科学技術総監は沈黙でラインハルトに報いた。返答に窮しているように見える。
「いや、総監、そいつは魅力的なアイデアではあるが、実際的とは言いがたいな。改良すべきを改良した上で、いずれ改めて提案してもらうとしよう」
ラインハルトはしなやかな動作で立ちあがりかけた。・・・
「お待ちください。その条件は不要です。なぜなら私の思案は・・・すでに構築された要塞を、イゼルローン回廊まで移動させるというものです」・・・

「詳しく聞こうか」
科学技術総監の血色の良すぎる顔に勝利の色が一段と艶を付けた。ラインハルトにはそれが気に入らなくはあったが、興味が上回ったのである。

(解説)
ラインハルトは科学技術部門の業績がないに等しかったので、総監のシャフトを更迭しようと思っていた。そんな折、イゼルローン攻略の提案がなされ、どうせロクでもないんだろうという気持ちで、やむなく15分だけ時間を取ってやった。そして、それ見たことか時間が無駄だった、と立ち去ろうとすると、ラインハルトが考えていないような奇策が飛び出してきた。それで、興味を持ってその計画を聞くことにした。

ラインハルトはただでさえも忙しいから、15分の時間を取れるだけでも奇跡である。この時間内に興味を持たせなければ終わりだ。少なくとも提案を受ける方のアイデアを越えるアイデアでなければ、引き留めておくことはできない。

常に、提案を受ける側のレベルを意識して、そのレベル以上のものを提供できれば、どんなサービスでも売ることはできる。また、上司を説得することもできるかもしれない。

(教訓)
〇常に、相手の期待を上回る営業トークを心がけよ。
〇必殺トークは、いざという時にとって置け。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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