外的条件から見れば、それは宇宙の大半を支配する空前の大帝国と、流亡の一私兵集団との戦いである。・・・内的要因からみれば、それは精神的な双生児同士の闘争であった。ラインハルト・フォン・ローエングラムほど長期的な広い視野と豊かな構想力と前線・後方の両面に対する組織力とを併せ持つ戦略家は、ヤン・ウェンリー以外には存在しなかった。ヤン・ウェンリーほど深い洞察力と正確な状況判断力と臨機応変の対処能力と兵士の信望とを兼ね備える戦術家は、ラインハルト・フォン・ローエングラムの他にはいなかった。それは常勝と不敗の対決であったのだ。
・・・両者が戦わざるを得なかったのは、彼らの価値観がただ一点において一致しえなかったからである。社会的公正を実現するための権力は、集中しているべきか、分散されているべきか。
(解説)
ラインハルトとヤンは、戦力的には雲泥の差があるが、目指すところは、同じ方向性を向いていた。それ故、精神的な双生児同士の戦いなのである。どちらも社会的公正を目指していた。前者が専制政治、後者が民主主義による公正の実現と言う手段や価値観の違いであった。
ここにリーダーとして必要な要素が列挙されている。まずラインハルトは、広い視野、豊かな構想力、前線・後方の両面に対する組織力。ヤンは、深い洞察力、正確な状況判断力、臨機応変の対処能力、そして兵士の信望を備えていた。
局所的には正しくとも、全体的には正しくないという事はよくある。狭い視野しか持ちえない、局所的な効率化のために、全体的な非効率化を生むものだ。経理が自分たちの仕事のやりやすさにこだわった結果、営業部等に負担をかけ、会社全体的な効率性を失うことは珍しくない。
豊かな構想力を持てば、より大きなマーケットを取りに行くこともできるし、一つダメでもまた次とすぐにトライできる。会社の成長が停滞しない。また、深い洞察力、正確な状況判断力、臨機応変の対処能力も不可欠である。状況判断が正確でなければ、対処法が誤る。そして、状況がすぐに変わる中で、すぐさま、変化する状況に対処できなければ、ある状況では正しくとも、状況変化後は正しくないということもある。
前線、後方の両面に対する組織力、これは営業部も管理部も統括できることである。営業部出身の社長は、営業部は上手く管理できても管理部を上手く管理できるとは限らない。逆もまた真である。
そして組織力は、部下からの信望に依存する。信望がなければ、組織を上手く機能しきれない。
(教訓)
〇リーダーとしての資質は、広い視野、豊かな構想力、前線・後方の両面に対する組織力、深い洞察力、正確な状況判断力、臨機応変の対処能力、そして兵士の信望を備えることが重要である。