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持ちつ持たれつ

コンラート・リンザー中佐以下の二個大隊を地表に送り込んだワーレン艦隊は、本拠に侵入した中佐からの連絡で数か所に渡る地上からの出入り口を知り、一斉に大気圏に突入し、総攻撃を開始した。中佐の情報は、「亜麻色の髪の少年」を代表とするフェザーン独立商人の一グループに負うところ大であった。

「リンザー中佐によれば、地球教の本拠を攻略するのに、少なからず協力してくれたそうだな」
「はい、理不尽にも地球教徒にとらわれておりましたので、半ばは自分たちの意趣返し、喜んで協力させていただきました」・・・
「何か礼をもって功に報いたいが、望みはないか」
「私ども一同が、つつがなくフェザーンへ戻れますなら、この上、何の望みもございません」
「もし商売の上で損害を被ったなら、補償してやっても良い。遠慮せず申し出ることだ」
辞退すれば欲が少なすぎるとして、疑われる可能性もある。ユリアンは謹んで、実はずうずうしく、司令官の好意を受け、後日、損害額を算定して提出することにした。ポリス・コーネフ船長への謝礼にすればよい。彼自身の報酬は一枚の光ディスクで十分だった。

(解説)
ユリアンたちは同盟の人間という身分は完全に伏せて、フェザーンの独立商人と言う立場で、帝国軍を支援した。数名で地球教徒たちと戦っても勝ち目がない。そもそもユリアンたちは情報収集ができればよかったので、帝国軍に協力することで、自分たちの目的を達成することができた。

後段は、ワーレン上級大将とユリアンが面会したときに、情報提供を感謝された。ユリアンはワーレンからの申し出に、フェザーンへの安全な帰国と損害額を求めた。ユリアン個人は、地球教に関する一枚の光ディスクである。

帝国軍は地球教徒の殲滅、ユリアンらは地球教に関する情報を得ること、それぞれ目的が異なるために、帝国と同盟の人間ではあったが、お互いが協力し合える関係にあった。

事業提携をするような場合も、お互いのメリットの方向性は同じながらも、お互いの目的が異なる所にある相手にするのが望ましい。そもそも目的が若干異なり、自らの能力も異なるから、提携が成立するということもあるだろう。提携の前に、相手のニーズを確認し合うことが、その後の不和を避けるために有効な手段と言える。

(教訓)
〇お互いの目的が同じベクトルにありながらも、目的が異なる同志の方が、事業提携は上手くいく。
〇相手の行為には素直に甘えよう。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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