「ジーク、あなたはもっと自分を評価すべきですよ。弟には才能があります。多分、他の誰にもない才能が。でも、弟はあなたほど大人ではありません。自分の足の速さにおぼれて断崖から転落する羚羊(かもしか)のような、そんなところがあります。・・・」
「どうか、ジーク、お願いします。ラインハルトが断崖から足を踏み外すことのないよう見守ってやって。もしそんな兆しが見えたらってやって。弟はあなたの忠告なら受け容れるでしょう。もしあなたのいうことも聞かなくなったら・・・その時は弟も終わりです。そんなに才能があったとしても、それに伴う器量がなかったのだと自ら証明することになるでしょう」
(解説)
ラインハルトとキルヒアイスが、ラインハルトの姉アンネローゼのもとを訪れ、ラインハルトが席を外したときに、アンネローゼがキルヒアイスに弟の事を頼むときの会話である。例えが美しい。
子どもっぽい経営者はいるし、それなりに大物もいなくはないが、どちらかと言えば、本当の意味で成功している経営者は、大人な対応ができる人物の方が多い。そもそも経営はある程度長く続けられて初めてある程度の結果と呼べるものになるから、そりゃあ、ある程度年を取っている。若いうちに成功して、しばらく時間が立つと、トンと聞かなくなる人も多い。
気持ちは子供っぽくていいのだ。しかし対応は大人でなければ、結局多くの人から賛同を得られない。まだ若いうちは勢いだけで突っ走れる。上の例えで行けば、体力や才能任せで、速く走れるが、自分のコントロールができないモノだから、暴走し、結果、ブレーキをかけられずに崖から落ちる。
だからこそ、身近で大人が見守ってあげなければならない。そうすれば、その才能が生かされることになる。
一番身近にいる人の忠告が聞けなくなったら、終わりである。人間だれしも間違うのだ。だから、その間違いを諫めて、大やけどをしないうちに留めてくれる人が必要なのである。才能と器量、この二つを持ってこそ、本当の成功者になりうるのだ。
(教訓)
〇立派な経営者とは、自分を上手くコントロールできる人物である。自分を管理できなくて、他人を管理できるはずがない。
〇成功者は、才能と器量を要する。