他者を支配し指導する立場にある者が、居丈高に質朴を強制するとき、自分自身がそれを遵守する例などありはしない。肥満は怠惰の証明であるとして国民の食事内容にまで鑑賞したルドルフ大帝が、自身は美食と暴員の果て、晩年は痛風に悩まされたという事実がある。ルドルフにしてみれば、彼の食物を平民どもが無秩序に食い散らすのが不快であったのだろう。上かくあれば下それに倣う。
(解説)
自分に厳しく、他人に厳しいという人はいるが、おそらく自分に甘く他人に厳しい人の方が多い、というのか目立つというのか。単純に分類すると、以下のように分けられると思われる。
(a) 自分に厳しく他人にも厳しい
プライドが高い。神経質で完璧主義。間違いは認めるが謝罪はしない。しても感情がこもっていない。真面目だが要領は悪い。正論で他人を傷つけるが自覚はしていない。
(b) 自分に甘く他人にも甘い
楽天的でノリが軽い。人当たりはものすごくよい。愛想がいいが行動が無計画。人生何とかなると思っているが行動が伴わない。
(c) 自分に甘く他人に厳しい
見栄ははるが、個人的に努力はしない。他人に厳しくすることで、自分を高く見せる。自分の失敗を他人のせいにする。やればできると思っているが、結局何も行動しない。
(d) 自分に厳しく他人に甘い
自信や実績があるが自慢しない。他人に過度な期待はしていない。他人と競争するよりも自分と競争をしている。成功は周りのおかげ、失敗は自分の責任とストイック。
成功するリーダーの特色は、まず人に対して甘いか厳しいかというよりも、自分に対しては極めてストイックである。いずれにしても、自分に甘いリーダーの下では、部下に厳しく当たっても、そのうち部下がやる気をなくし、甘くなる。上に下は倣うのである。そのため、自分に厳しくなることで、そのような自分に厳しくする組織風土を作るのが大切である。他人、つまり従業員に対しては、厳しすぎもせず、甘すぎもせず、といった態度が良いのであろう。過度に厳しくても、過度に甘くても組織としてのまとまりを欠いてしまう。
(教訓)
〇成功するリーダーは、まず自分に対して厳しくストイックであること。
〇下は上に倣うので、自分に厳しいリーダーの下で、他人から強制されるまでもなく、自らも厳しくするような組織風土を作ることが大切。
〇従業員に対しては、過度に厳しくなく、過度に甘くなくに努めよ。