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正確に、但し要するに伝える技術を持て

身内の方ですか、という質問に対して否と答えてから、人間関係の説明にヤンは困惑した。代わって説明したのはパトリチェフ大尉である。
「あのご老人は、帝国からの亡命者でね。軍にとって割と重要な人だったので、私らが惑星ハイネセンまで同行するよう、上層部から命令されておったのです。ですから、葬式についても、私らの一存で決定できんのですよ。ご迷惑でしょうが、ご了承下さい」
事情を四捨五入して過不足なく説明できるのは、パトリチェフの貴重な才能である。さらに、軍の機密の存在をほのめかせながら、決して高圧的にならず、悠然たる態度で結果的に相手の好意的な協力を引き出してしまう当たりが、さらに貴重な人というものであった。

(解説)
ケーフェンヒラー大佐は、ヤンやパトリチェフが同盟首都ハイネセンへ向かう宇宙船で息を引き取った。そのときにパトリチェフがケーフェンヒラーとの関係を関係者に説明した。

四捨五入とは端数処理のルールの一つである。実務においては、小数点以下を0とする丸目を切り捨てといい、小数点以下が0でなかった整数部分を1増やして、小数点以下を0とする丸めを切り上げという。

この四捨五入だの切り捨ては、税金の計算や金利の計算など身近なところに存在し、ルール化されている。また、実は1年は365.242199日であって、そんなことは知らずに、我々は1年は365日と認識している。そして4年に一回閏年があるとしているわけだが、端数処理はこんなところにも出てきているわけだ。それを小数点以下まで我々個人が把握しようものなら、社会がスムーズに進まない。

さて、上記、パトリチェフの才能を「事情を四捨五入して過不足なく説明できる」とヤンが評しているわけだが、事情を事細かく説明していては、相手も聞き取り、理解するのが大変である。物事を過不足なく、しかも正確に、そして「要するに」説明できる人材は貴重と言える。大抵、過不足があり、不正確だったりするし、要するに、という後を聞くと、なんだかかえってよくわからない説明しかできない奴がいる。

リーダーも平易な言葉で、要するに○○だ、と言い切れる命令を行えるようにしよう。命令は伝わらなければ意味がない。もちろん対消費者向けのマーケティングも同様である。伝えることが必要であって、全てのことを伝える必要もない。しかし正確に、要するに伝えなければならない。

(教訓)
〇リーダーは、正確に、要するに伝える技術を持て。
〇四捨五入的伝え方は、スムーズなコミュニケーションをもたらす。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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