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リーダーが突然いなくなったらどうするか

「ヤン・ウェンリーの被保護者であり用兵学上の弟子であったという事実は、この際、無視できない。実力以上の効果があるのではないかな」
「カリスマと言う奴か?」
「既製の用語等、どうでもいい。重要なのは、この際、ヤン・ウェンリーと言う恒星の残照を、誰が最もよく反射するかという点だ。」

それはユリアン・ミンツ以外に存在しない、と言う点で、彼らの意見は一致した。むろん補佐役が必要かつ重要ではある。ユリアン一人に荷重を負わせるつもりは彼らにはなかった。結局のところ、分担される責務の中で、「顔」の部分を担当する者が不可欠なのだった。

ユリアンの将来性は、故人となったヤンも認め、かつ期待するところだった。・・・
「だが俺たちと同じように、他の将兵が考えるかどうかだ。ユリアンが指令を出しても、面従腹背で応じるかもしれんぞ」
「俺たちの意識改革こそが必要だろうな」
まず幹部たち自身が、ユリアンの指導性を尊重し、彼の指示や命令を受容し、彼の地位と決定が他者に優越することを認めなくてはならない。でなくては、兵士たちがユリアンに従うはずがないであろう。

(解説)
ヤンに従う人は多くいたが、現実的に後継者を育成してはいなかった。これが帝国ということであれば、後継者を育てておく必要はない。ただ生んでおけばよい。会社の社長の息子、あるいは孫が社長を継ぐ、ということは珍しくはないが、そこで働く人にとっては、どんなに出世しても、、、と言う気持ちになってしまう気がする。子孫を後継者にしてはならないわけではないのだが、帝国的な腐臭がして、気持ちのいいものとは言えない。それが大企業であれば、特に公開企業ならなおさらである。中小企業の後継者なんて、どうでもいいのだ。

さて、ヤンが暗殺され、その後継者を周囲の人間はユリアンとした。ちなみに政治的にはヤンの奥さんであるフレデリカであった。ユリアンにした理由が、ヤンの子供的な位置だったということもあるし、ヤンからの思想を受け継いでいたという点である。組織をまとめるためには、能力だけでなく、束ねる効果、意味も必要だという事だ。

そして、「顔」以外については、全員でサポートすればよい。今の実力でなく、将来性を加味してリーダーとした。何よりも重要なことは、幹部がある人物をリーダーだと決めたら、理由の如何を問わず、そのリーダーに従うこと。幹部が心から、ある人物をリーダーとして扱わなければ、その下の部下たちは、もっとリーダーとして扱わなくなる。

この考え方は会社組織にも言える。舐められた経営者というものはいるが、幹部が経営者を舐めていることがある。逆に経営者は幹部に対して、規律を持たせておけば、スタッフレベルではその規律が行き渡る。そもそも幹部が経営者を舐めている会社は、健全に継続することはないけれども。

(教訓)
〇後継者に相応しいのは、能力だけではない。後継者の残照を効果的に反射する鏡かどうかもポイント。現在の実力よりも将来性も加味せよ。
〇経営者が幹部に対して、規律を持って接すれば、組織全体にその規律が行き渡る。経営者はまず幹部に舐められてはいけない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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