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部下に戦略を聞く時には

「稀代の用兵巧者たる卿に、今さら私から言うこともないが、同盟軍は窮鼠と化してわが軍を迎えるだろう。いかに対処するか、一応、卿の思うところを聞いておきたいが・・・」

・・・「そこで、彼らとしてはわが軍を深く領内へ引きずり込み、行動の限界点に達したところで補給路を途絶し、通信を妨害して各部隊を孤立させ、各個撃破をかけてくるでしょう。つまり三年ほど前のアムリッツァの会戦をほぼ攻守所を変えて再現することになります。従って、軍列をいたずらに長くすれば敵の思惑に乗ることになりましょう。ですが、小官としてはそこにこそわが軍の勝機があると考えます。」
ミッターマイヤーが口を閉ざし、ラインハルトを見つめると、若い主君は、鋭敏さと優美さが絶妙に融合した笑顔を作り、部下の能力に対する満足の意を表した。
「卿の狙いは、双頭の蛇だな」

(解説)
同盟領へ進行する際に、その先陣を切るミッターマイヤーに対して、作戦を尋ねた。多少懸念があったり、失敗できない大勝負であったときには、部下にその作戦を聞くのも悪くはない。その際に、聞き方があると思われる。もっとも、ラインハルトの聞き方は、彼だけしかできないだろう。他の連中がやったら嫌味臭い。

「今回は重要な事業で失敗すると痛いからさ、いつもうまくやってくれるから心配してないけど、どうやるか教えてよ」くらいで良いのではないだろうか。心配はしていないから、任せる、という意思を強調しよう。

さて、ラインハルトが最後に言っていた「双頭の蛇」であるが、これはいわゆる陣形の話である。双頭の蛇の陣形は中央・左右両翼が一直線に並ぶ陣形で、中央・左右両翼のうちで攻撃を受けた個所が囮として敵の攻撃を持ちこたえ、その間に攻撃を受けていない個所が回り込んで相手を包囲することを狙いとする。一方、鶴翼の陣形は、自軍中央部に対して左右の両翼が斜め前方に展開する。

双頭の蛇も鶴翼も、囮に相手を引き付けている間に包囲殲滅することを目標としているが、鶴翼は、囮が最初から定められており、対する双頭の蛇は相手の動きに合わせて囮が定められるという点で異なる。

要するにどちらかの頭に食いついてきたら、別の頭でそれを食らうという戦法である。

(教訓)
〇仕事の方法を聞くには、相手の事を信頼しており任せるという態度を強調せよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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