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嫌な事をやってもらうコツ

入室したオーベルシュタインは、一同を見回すと、遠慮なく批判した。
「卿らの討議も、長いわりに、なかなか結論が出ないようだな」
「なにしろわが軍には目下ナンバー1、ナンバー2がおらず、まとめ役を欠くのでな」
ロイエンタールの言うことも手厳しい。オーベルシュタインのナンバー2無用論が結果としてキルヒアイスの死につながった点を突いたのである。
「で、参謀長には良い思案がおありか」
「ないでもない」
「ほう?」
「ローエングラム侯の姉君にお願いする」
「グリューネワルト伯爵夫人か。それは吾々も考えたが、それだけで埒があくか」
ロイエンタールはそう言ったが、実のところ、アンネローゼに報告する役を、誰も引き受けたがらなかった。

(解説)
賊軍の長、ブラウンシュヴァイク公は、部下らに毒殺された。そしてその遺体をラインハルトの下にもたらしたのが、部下のアンスバッハであった。ブラウンシュヴァイク公の死体の中に、ハンド・キャノンを隠し持ち、アンスバッハがラインハルトを狙撃しようとしたときに、身を挺してキルヒアイスが守った。その結果、キルヒアイスがアンスバッハに指輪のレーザーに射貫かれ、命を散らした。

本来、キルヒアイスは銃の携帯を許されていたが、オーベルシュタインのナンバー2不要論によって、この場では他の将校と同じく、キルヒアイスは銃を持っていなかった。つまり、キルヒアイスはオーベルシュタインによって、殺されたも同じことなのだ。

ラインハルトの姉には、伝えづらい話である。確実にラインハルトの気分すらも害することになる。その伝えづらい話をする役目を誰にするか、一番やりたくない仕事は、その仕事をその意思決定によって増やしたオーベルシュタインが負うべきだ、というのは理屈に合っている。

とにかく頼みづらい要件の時には、その要件を作った本人か、もしくは、その要件の前にミスを犯した人に対して、事後処理をさせると良い。嫌々ながら引き受けざるを得なくなる。

(教訓)
〇頼みづらい要件を依頼するときには、その要件を作った張本人か、あるいはちょっと前に何かでミスした人物に頼むと良い。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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