「私としては、このルートを使いたいのだ。・・・ほとんど、今では閉鎖されている場所を通っているから、発見される可能性も少ない」
図面の上を、アルフレットの指が勢いよく動いた。その図面は、大変な苦労の末に入手したのだ、と、恩着せがましくフェザーンの弁務官から渡されたものである。
帝国博物学協会のビルの地下倉庫から始まる総延長12.7キロの地下通路は、アルフレットの五代前の先祖が、当時の皇帝ゲオルグ二世の勅命を受けて工事に当たったもので、その先祖は功績によって皇帝の寵姫の一人を下賜され、さらに、後世、皇帝のみに危急のある事あるときはこの通路を使って救出せよ。とのかたじけない御諚を賜った、ということであった。
「私がこういう大役を果たさねばならないという運命は、五代前も前に定まっていたのだ。奇縁というしかないな」
(解説)
アルフレット・フォン・ランズベルク伯爵とレオポルド・シューマッハは、七歳のゴールデンバウム皇帝を奸臣(ラインハルト)の手から救い出す作戦を練っていた。逆の面からみれば、単なる誘拐以外の何物でもないのだが、手段が不当でも、目的が正当であればよい、というのが彼らの言い分である。
フェザーンの強力を得ているからと言っても、ラインハルトの警備隊を相手にしなければならないため、彼らにとっては難題であった。ラインハルトとしては、連れて行ってほしかったものの、警備はいつもの通りにしていた。
アルフレットは、この困難な作戦に自らを奮い立たせるために、「五代も前に定まっていた」と勝手な思い込みをしていた。でも、これでいいのだ。
困難な仕事は、そうやすやすと、その目標が達成できないようにできている。そうして、計画の段階で、あるいは行動をしてすぐに諦めてしまうこともある。でも、どんな対辺のあ事だって、やって見なければ始まらないし、都度改善していけば、目標にたどり着くこともあるのだ。まずはやることが大事。そのため、それを運命論にしてしまった方がいい。
俺がやらなければ誰がやる。これは俺にしかできないことだ。運命がそう言っている。思い込みでいいのだ。自信を持ち、やり始めれば、大抵どんなことでも達成できる。
(教訓)
〇困難な仕事は、自分がやらねば誰がやる、と言う気でやれ。