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経営者は部下を道連れに玉砕するな

「・・・もし降伏するのが嫌なら逃げよ、追撃はしない、と・・・」
「汝は武人の心を弁えず、吾、死して名誉を全うするの道を知る、生きて汚辱に塗えるの道を知らず」
「この上は全機突入して玉砕し、もって皇帝陛下の恩顧に報いるあるのみ・・・」
「武人の心だって?」
・・・実際、ヤンは怒りを覚えていた。死をもって敗戦の罪を償うというのなら、それもよかろう。だが、それならなぜ、自分一人で死なない。なぜ部下を強制的に道ずれにするのか。
こんな奴がいるから戦争が絶えないのだ、とさえヤンは思う。

(解説)
帝国からの亡命者、ワルター・フォン・シェーンコップの率いるローゼンリッター隊が偽の救難信号を用いて、帝国軍のゼークト大将の駐留艦隊を要塞から引き離し、その隙に拿捕した帝国軍の艦船を使って、要塞内部に潜入し、要塞の中枢部を制圧した。

イゼルローン要塞を乗っ取ったヤンは、降伏するか逃げろとゼークト大将に伝えたが、大将は要塞を攻撃してきた。結果玉砕した。

会社でも死なばもろともという経営者は少なくない。倒産間際に賭けに出る。賭けとは冗談抜きで単なるギャンブル的な手法、いわゆるイチかバチかである。そしてそれに付き合わされるのもまた、役員などの同僚や従業員である。従業員の立場から言わせてもらえば、悪あがきはやめろ、といったところだ、そんなことより、きちんと給料を払え、ということの方が重要なのだ。

ここでなんらか費用をかけたら、事業に光が見えるのならばよいのだが、そんなことはほぼ稀である。タイタニックよろしく、船長と一緒に沈むのがオチだ。経営者は、会社を潰したら、とりあえずは一幕は終了である。でも、それで完全に終わることはない。また一から始めればよいだけの話だ。くだらない見栄は張るな。プライドよりも生活だ。食わねど高楊枝ではない。まずは部下を食わせろ。

悪あがきをするよりも、一緒に沈むやつを募集するのではなく、従業員を逃がす方が先だ。逃がすというよりは、従業員の転職活動を優先させるということだ。経営者の仲の良い社長がいる会社に引き取ってもらうのも手だ。

会社が傾きつつあるときに先に逃げる者を卑怯者呼ばわりすることの方が多いが、それでお互いがギスギスするよりは、去る者は追わず来る者は拒まずという考え方の方がスッキリしてよい。また、どこかで気持ちよく再開すればいいじゃないか。ダメ経営者に再会したいと思うかは別だが。

(教訓)
〇危機的な状況下において、経営者はイチかバチか賭けに出るよりも、従業員のひとまずの生活費を大切にせよ。
〇去る者は追わず来る者は拒まず。経営者はさっぱりしていた方がいい。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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