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指揮官はどんなときにも動揺してはならない

「どうやら勝ったな」
ラインハルトはオーベルシュタインを顧みて、ごくわずかに声を弾ませた。
「どうも負けたらしいな」
ほぼ同時に、そう思ったのはヤンだが、それを口に出すことはできなかった。
古来、指揮官の発言は観念を具消化する魔力を持っているようで、指揮官が「負けた」と言う時は必ず負けるものなのだ。その逆はごくまれにしかないが。

ラインハルトは、不意にオーベルシュタインを顧みた。
「キルヒアイスはまだ来ないか?」
「まだです」
感銘に答えた参謀長は、意識してか否か、皮肉っぽい質問を発した。
「ご心配ですか、閣下?」
「心配などしていない。確認しただけだ」
叩きつけるように応じると、ラインハルトは口を閉ざしてスクリーンをにらんだ。

(解説)
帝国側のラインハルトは勝ちを確信した。逆に同盟側のヤンは負けを確信した。勝ちを確信したときは、それを口に出しても良いが、負けたと思っても、それを口に出してはならない。いわゆる言霊と言う奴だが、絶対的にそのようになってしまう。

あと、いい加減にしてほしいのは、勝ってもいないのに勝ったという大本営発表経営者だ。結果が出た後で、結果が出たというのはよいが、結果が出てもいないのに結果が出たといって、部下を惑わずバカがいる。理由は二つあって、部下や周囲の人間を最後まで騙すことによって、彼らに離れられては困るからギリギリまで結論を伸ばすこと、もう一つは自分自身を落ち着かせるために部下や周囲の人間を騙す行動である。自分が勝ったと思い込めば勝つほど世の中は甘くない。言霊はそこまでの魔力はない。少なくとも部下や同僚、周囲の人間を惑わすのはやめろ。

次に、状況が不利になった時に、少し焦ることがある。それを部下や周囲に感じさせてはならない。そのときに「心配ではなく確認しただけだ」と言い切る。これができる経営者である。

(教訓)
〇勝ったという結果が出た後で勝ったといえ。負けた結果が出たときにはすぐに負けたというな。
〇経営者は部下や周囲の人間に嘘を言って惑わすな。言うからには責任を持て。
〇経営者は焦るな、事実確認は行ってもいいが、動揺するな。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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