ポリス・コーネフは、今や冷笑さえ浮かべていなかった。厳格なほど真剣な表情が顔に張り付いている。
「皇帝ラインハルトには今のところ失政はないし、器局と武力とは、全宇宙を統合するに足りるだろう。彼を打倒した後、時代がよりよいものになるという保証はあるのか」
「ない」
「正直だな。まあそれはおくとして、今ひとつ。あんたがいかに努力をしたところで、ひとたび衰弱した民主共和制が健康に再生するとは限らない。フェザーンを巻き込んだとしても、かえって母屋を取られてしまうこともありうる」
「そうかもしれない」
ヤンは冷めきった紅茶を口に含んだ。
「・・・だが、いずれ必ず枯れるからと言って、種をまかずにいれば草も生えようがない。どうせ空腹になるからと言って、食事をしないわけにもいかない。そうだろう、ボリス?」
ボリス・コーネフは軽く舌打ちした。
「つまらん比喩だが正しくはあるな」
(解説)
ビジネスのネタというのは、無数に落ちている。ただ、そのネタであるビジネスの「種」を土に埋めなければならないし、肥えた土壌に植えなければだめだ。肥えていなければ、肥料を与える必要がある。さらに、その土壌は日光に当たり、加えて、水をやらなければならない。
何年やっても上手くいかない人はいる。相も変わらずダメで、この前会ったときと代わったことは、より借金が増えたことでしかない。それだけ借金を重ねられるのはすごいことではあるが。それでもすごいのは種は巻き続けていることかもしれない。でも土壌が腐っているから育だない。借金と言う土壌であり、自信過剰であるという土壌だ。
会社はダメになろうとも、経営者がいつかは倒産するから、と言う諦めの心境であれば、粘ったところで、復活は難しい。だが、我々は食べていかなければ、生きていけない。生活の糧は必要だ。最悪、ハローワークで仕事を探せば、生活費ぐらい稼げる仕事は見つかるだろう。だが、経営者はそんなことでいい訳ではない。自ら稼がなければ。そのため、経営者は自らの心に養分を与え、自信を回復すること。とにかくビジネスの種を見つけて、土壌に種をまき続けること。そうすれば、いつかは草が生えてくる。種をまき続けなければ、植物は育たない。種をまいてすぐにお金にはならない。時間がかかることを認識せよ。そのために早めに数多くの種をまくのだ。
(教訓)
〇会社の借金過剰や経営者の自信過剰によって、土壌が腐ると、どんなビジネスの種も華を開かない。
〇いずれ枯れるからと言ってビジネスの種をまき続けなければ、ビジネスと言う植物は育たないし、成功と言う花は咲かない。