「トリューニヒトみたいな巧言令色の輩の演説なんぞ、素面できけるもんじゃありませんよ」
ヤンの想いをアッテンボローは言語化して見せた。「本気でそう思っているなら、自分で戦場へ出て来ればいいんです。愛国心に燃える国防委員長閣下は、兵役当時も後方勤務を志願して、同盟首都を一歩も離れなかったそうですよ」
「ありえることだ。戦場から離れるほど、人間は好戦的になる。さっさと退役して、あんな奴に敬礼しなくて済むようになりたいな」
(解説)
トリューニヒトとヤンが長距離光速通信で会話をして、ヤンが嫌気がさしていた。そこにアッテンボローがやってきた。
巧言令色とは、口先だけで上手いことを言ったり、うわべだけ愛想よくとり作ったりすることである。論語に「巧言令色鮮し仁」と言う言葉があって、巧みな言葉を用いて、表情を憑りつくろって人に気に入れられようとする者には、仁の心が欠けていることを意味している。トリューニヒトはまさに民主主義国家における政治家そのものであるが、古今東西、そんな奴ばかりだなと思う。
ラインハルトは、自ら先頭に立つタイプである。リーダーがいなくなってしまう危険はあるが、次世代のリーダーを育てるのもまた、現職のリーダーの役目である。自らがいなくなったら組織が終わる、というのであれば、そのような一人の人に依存しきった組織の方が危ないだろう。
ヤンの言う通り、「戦場から離れると、人間は好戦的になる」。現場にいないからこそ、現場の人の苦労などわからずに好き勝手に言える。売れない商品があるのであれば、売れる商品を開発しろ、マーケティングのやり方が下手くそだ、営業の方法が悪い、考え直せ、ではなくて、まず経営者自らなぜ、その商品が売れないのかを自分で考える必要がある。スタッフがわからないことをスタッフの責任にしてはならないだろう。
研究だけさせてもらえれば、もっとすごい研究をする、販売も含めてお願いしたい、というバカもいるが、本来、自分で営業する気持ちがなければ、消費者が求める商品なんてわからないんだよ。それで売れないと、販売方法が悪いと言い出す研究者。文句を言う奴が一番最初に売ってこい。自分で求める研究にこだわっているから、消費者が求める研究になっていないということに気づいた方がいい。研究者が経営者になると、顧客ニーズ乖離がよく起こる。
(教訓)
〇経営者が顧客の近く、つまり現場にいないと、顧客ニーズ乖離が起こる可能性が高まる。自ら現場に出る回数を増やせ。
〇研究者上がりが経営者をやると、顧客ニーズ乖離がはなはだしくなり成功しない。