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経営者は理屈で部下を言い負かせ

ラインハルトは先手を打った。
「わが軍が不利な状況にある。その事に私の注意を喚起したいというのであろう」
「さようです。閣下」

・・・
「わが軍に対して敵の数は二倍、しかも三方向よりわが軍を包囲戦としております。これはすでに交戦体制において敵に遅れを取ったことを意味します。」
「つまり、負けると卿は言うのか?」
「・・・とは申しておりません。閣下、ただ、不利な体勢にあることは事実です。・・・」

・・・ラインハルトは相手の要請に応じた。
「私が有利と言うのは次の二点においてだ。一つ、敵が三方向に兵力を分散させているのに対し、わが軍は一か所に集中している。全体を合すれば敵が優勢であっても、敵の一軍に対したときには、わが軍は一か所に集中している。全体を合すれば敵が優勢であっても、敵の一軍に対したときは、わが軍が優勢だ」
「二つ、戦場から次の戦場へ移動するに際しては、中央に位置するわが軍の方が近路を取ることができる。敵がわが軍と闘わずして他の戦場に赴くには、大きく迂回をしなければならない。これは時間と距離の双方を味方したことになる。」
「つまり、わが軍は敵に対し、兵力の集中と機動性の両点において優位に立っている。これを勝利の条件と言わずして何と呼ぶか!」

(解説)
銀河帝国のラインハルト(上級大将)の下に、キルヒアイス、五人の提督(メルカッツ少々、シュターデン中将ら5名)が集い、提督らがラインハルトに状況を報告していたが、要するに、勝てそうにないという事を伝えていた。

このような状況は、企業にもよくありうる。中間管理職やその部下が、前線に立ち、動く。そのため、なるべく奇抜なことはやりたくないのだ。それを経営者が「ごたごたやらずにやれ!」と言いたいところだが、相手に反論を許さないように、その反論を理論的につぶしていくのが方法論としては正しい。「ただやれ!」ではただのアホだ。そういうただのアホも多い。部下は納得しなければ、最大のパフォーマンスを出せないのだ。だから理論的に自分の方が正しいことを納得させるしかない。

上記例では、まずは相手の方が強いことを素直に認める。それは覆しようのない事実だ。バカな経営者は次に根性論を持ち出す。ほぼ希望的な観測にすぎない。それではダメで、勝機をそこに見出さなければならない。

3つに敵が分散しているならば、一軍一軍との戦いであれば、わが軍は有利。そして、その他の二軍は移動してこなければならない、つまりロジスティクスの面から、エネルギーを消耗する、とラインハルトは説明した。

仮に飲食チェーン店と戦う場合、飲食店の本体と戦うならば、勝てるはずがない。しかしそのチェーン店の地域店の一つだったとすれば、勝ち目はある。大きければ大きいほど、小さな場所にこだわる理由もない。応援をよこすのも難しい。別の敵が現れるかもしれない。そのように考えれば、決して物量で劣っても、負けると言い切ることは不可能になるし、勝機が現われる。戦略も理屈もないのに、信じろといわれてもねえ。

(教訓)
〇力関係で負けていたとしても、一点突破で切り崩すことは可能。
〇経営者は部下からの進言に、理屈で答えよ。感情でごまかすな。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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