ヤンの見るところ、ローエングラム公が自らの手で幼年の皇帝を殺すことはまずない。あの若い美貌の独裁者は、それほど残忍でも愚劣でもないだろう。彼であれば、生かしたまま幼帝を利用する有効な方法を考え出すに違いない。・・・
ローエングラム公は、皇帝の逃亡によって何一つ失わない。それどころか、彼にとっては得るものがはるかに多いのだ。一つには、同盟における国論の分裂。一つには、皇帝を「奪還」ないしは「救出」することを目的とした、対同盟軍事行動の正当化。そしてさらに、皇帝への民衆の敵意を増幅させることで、国内の団結を図ることもできる。皇帝を同盟に亡命させることによって、ローエングラム公はこれらの様々な利益を享受できるのだ。
・・・彼はラインハルトの天才を高く評価していたから、若い美貌の独裁者が旧体制派の残党にむざむざ皇帝を奪われたとは信じられなかったのだ。・・・
「・・・すると、ローエングラム公は故意に皇帝を逃がしたというわけですか」
(解説)
旧皇帝派による7歳の皇帝の奪還劇は、相当な大事件ではあるが、ラインハルトはそれを利用した。幼帝を生かしたままでも活用したが、幼帝をさらわれても、それを自らに有効に利用するのだ。
仮にラインハルトが、奪還劇を事前に知らなかったとしても、それをうまく利用したであろう。優秀な経営者というものは、目の前に起きた事象を受け身で考えるのではなくて、その事象を自らに有利に活用するのだ。
コロナで誰も客が来ない。政府保証しろ、コロナのせいだ。でも回復したら何とかなる。ワクチンはいつ開発されるんだ!総理!総理!・・・
何でも人のせいにするな。この目の前の状況をどのように自らにとって有利に展開させるかを考えるのが、優れた経営者というものだ。事象に受動的な奴は、政府のせいにし、従業員であれば経営者のせいにし、売上が上がらないのをコンサルタントのせいにし、絶対に自分のせいにはしない。バカ丸出しである。まあ、そういう奴の会社は継続しないから大丈夫。間違いなく淘汰されて、市場から追い出されるから無能な経営者とその会社が消えるだけである。自ら変わろうとしなければ、ご主人様を変えたところで何も変わらない。
その会社に働いていた従業員がかわいそうだが、そのような経営者を選び、依存しなければならない、これもまた受け身な人生。そんなことではどこに行ってもダメですな。
(教訓)
〇優れた経営者は、目の前の事象に対して受動的になることなく、能動的に活用せよ。