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面従腹背も戦略の一つ

「さっそく、亡命政府の閣僚リストを作ってみたのだ。応急の事なので。不備な点も多々あるが・・・」
「それは迅速なご処置出るな」
応急などと言うが、幼帝救出の計画を知らされた時点から、この亡命貴族は自らを首班とする政権の構想を練っていたに違いない。たとえ実質を欠くものであっても、組織ができれば頂点に立ちたいと願うのは、政治活動に従事する人間としては当然のことである。
「よろしければ、リストを拝見させていただけますか、伯爵」
・・・
「うむ、本来は機密に属することだが、フェザーンにはこれからも何かと世話になることであろうし、正当な帝国政府の陣容を知っておいてもらった方が良いかもしれぬな」
「むろん、私どもフェザーンは、閣下を全面的にバックアップさせれいただきます。政略上、帝国のローエングラム公に対して弱腰の態度をとらねばならないこともありますが、あくまでも面従腹背、私どもの真の好意は、常に閣下らの上にあるとお心得下さい」

(解説)
亡命貴族のレムシャイド伯爵の元に、ランズベルク伯アルフレットが、皇帝救出に成功したと言う報告が入った。それを知らせたのが、フェザーンの自治領主ルビンスキーの愛人の子、ルパート・ケッセルリンクであった。

フェザーンにしてみれば、亡命政府なんてものは駒の一つでしかないのだが、駒にとっては、自分が「駒」であることを全く自覚していない。自分がキャスティングボードを握っているととんだ勘違いをしている。力のあるものには本当にかなわない。

孫悟空のようだ。いくら飛び回って、偉そうにしていても、お釈迦様の掌の上と言う奴だ。間抜けなことに、組織の上に頂点に立つことすら考えている。全く力の持たない、子供の遊びに近い。ただ、笑えない。日本の優良企業と面談が決まったことで、天下を取った気分に浸っている、経営者もこんなものである。自分の技術(商品やサービス)が認められたというとんでもない誤解をしている。それを見て、ベストケースで真似てくれてラッキーと言うものだ。大抵、全く見向きもされずに終わる。

ケッセルリンクの言い方も狸だ。面従腹背(めんじゅうふくはい)とは、「表面だけは服従するように見せかけて、内心では反対する」と言う意味である。そこで、「政略上、帝国のローエングラム公に対して弱腰の態度をとらねばならないこともありますが・・・、私どもの真の好意は、常に閣下らの上にあ」ります。どんなことをしていても、「面従腹背」ですからで済む。駒だと言う意識のない人間にとっては。

(教訓)
〇経営者は、相手を孫悟空にして置け。そして自分はお釈迦さまでいろ。
〇こちらは狸になっても、敵方には狸にさせてはならない。
〇面従腹背も交渉上の戦略の一つ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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