「それにしても、チェスの駒は動く方向が定まっていますが、人間はそうではありません。彼らを思いのままに動かし、ものの役に立てるのは、なかなか困難なことだと思われますが・・・」
「いい所をつくな。そう。、人間の心理と行動はチェスの駒よりはるかに複雑だ。それを自分の思い通りにするには、より単純化させればよい」
「と言いますと?」
「相手をある状況に追い込み、行動の自由を奪い、選択肢を少なくするのだ。例えば同盟軍のヤン・ウェンリーだが・・・」
ヤンがいなくなれば、戦わずして同盟軍は瓦解しかねない。・・・ラインハルトがいなくなれば、・・・もはや不要となったヤンを抹殺するだろう。生命まで奪うとは限らないが、政治的あるいは性的スキャンダルをでっち上げて名声を失墜され、公民権を奪う程度の事は、平然とやってのけるだろう。
一流の権力者の目的は、権力によって何をなすか、にあるが、二流の権力者の目的は権力を保持し続けること自体にあるからだ。
(解説)
ルビンスキーの名言である。「(他人を)自分の思い取りにするには、より単純化させればよい」、つまり選択肢を狭めるということだ。選択肢のない状況に人を追い込む、ということでもある。
従業員がどんなに会社がブラックであろうと、上司のいう事に従うのは、給料をもらえないと食べていけないからである。スキルがあって、他に雇ってもらえるところがあるのであれば、ブラック企業等さっさとやめるであろう。もっとも、仕事を多忙にしてしまって、判断能力を奪っているという可能性もある。これは自分で選択肢を狭めているということだ。
メニューも松竹梅と選択肢はあるが、その真ん中を選ぶ傾向が多いのはさておき、程よい選択肢があるから心地もよく、それ以外に選ぶ者がないから、その三種の中でしか選ぶことができない、と言う意味では、意思決定を促進しているといえる。もっとも、選ばず店から出ていくという選択肢もないわけではない。
一流の権力者の例えを会社組織に当てはめて考えることができる。一流のリーダーは自らの権限をどう行使するかに関心があるが、二流のリーダーは、その権力を保持することに関心を持つ。権力保持にしか関心がないとは、、、どこかの国のトップみたいだな。会社も同じか・・・。
(教訓)
〇相手を思い通りにするには、選択肢を狭めよ。
〇一流のリーダーは、権限の行使について、二流のリーダーは今の権限をどう守るかしか考えていない。