「ビッテンフェルト!」
「はっ・・・」
「卿らしい失敗だな。罠の存在を予期しながら、敢えてそこに踏み込み、それを噛み破ろうと試みて、果たせなかったか。万骨枯れて一生の功もならなかったわけだ」
ビッテンフェルトは前進を使って声調を整えた。
「むなしく僚友を死なせ、陛下の兵士を多数損ないました。無能非才の身、どのような罰に処されようとお恨みは致しません」
ラインハルトは頭を振った。豪奢な黄金の髪が子経過した陽光を思わせて波打った。
「咎めているのではない。卿らしからぬ失敗をするよりは、よほど良い。この上は、卿らしい働きで失地を回復せよ。」
「勝利か死か、ですか、わが皇帝」
ロイエンタール元帥が半ば独語のように言うと・・・
「違うな。勝利か死か、ではない。勝利か、より完全な勝利か、だ」
ラインハルトは透明感のある声で笑った。
(解説)
いつも同じ間違いをしていては、反省がないといわれてしまうが、その人ならではの間違いと言うのはしてもやむを得ないこともある。その人らしくない失敗と言うより良いだろう。
実はその人の長所とは短所とコインの表裏の関係にある。従い、その人のやり方を貫いた場合、上手くいくこともあれば、失敗することもある。一番良くないのは、らしくない失敗をしたときなのだ。それは想像もつかないどころか、自分の長所を生かし切れないことにつながる。長所を生かして失敗したら、タイミング、相性、相手が悪かったというだけのことが多い。とにかく仕事は自分の長所を生かしきることにある。その結果失敗したら、反省をすればいい。それ故、ラインハルトは、「卿らしい働きで失地を回復せよ」、つまり長所を生かして、失敗を取り返せと言っている。
「勝利か死か、ではなく、勝利か完全な勝利」とは非常に良い言葉である。常に自分の商品やサービスのことを考えてみよう。顧客にとって「満足か不満か」の二択ではなく、「満足かより満足か」の二択しかないとしよう。より良い商品やサービスの提供に心がけるようになると思われる。
(教訓)
〇らしい失敗をしているうちは大丈夫だ。らしくない失敗をしたときは要注意だ。
〇顧客に対しては、「満足か、もっと満足か」を心がけよう。不満だけはあってはならない。