・・・ヤンの指揮する船団は、エル・ファシル星系を離脱し、いっさんに後方星域へと向かっていた。帝国軍の探知網は彼らを捕捉していたのだが、脱出するような宇宙船は必ず何らかの探知防御システムを備えているもの、との先入観から、レーダーに映っている以上、人工物ではなく大規模な隕石群だろうと考え、みすみす見逃してしまったのである。
「要するに3、4,000年前から戦いの本質というものは変化していない。戦場に着くまでは補給が、着いてからは指揮官の質が、勝敗を左右する。」
「勇将の下に弱兵なし」とか、「一頭のライオンに率いられた100頭の羊の群れは、一頭の羊に率いられた100頭のライオンの群れに勝つ」・・・
硬直した固定観念ほど危険なものはない。
(解説)
自由惑星同盟のヤン・ウェンリーが英雄となった作戦、というか事件である。ここから二つ得られることがある。小説の順番上、サンドイッチのようになってしまっているが、まずは硬直した固定観念は持つな、ということだ。
固定観念の通りに動くと、敵のコントロール下におかれることになる。つまり予測通りの結果しか生まないから、先手を打たれる。固定観念を棄てれば、相手も予測できないから、自分のコントロール下に置くことができる。
困ったことに固定観念を無視すればうまくいくという事ではなく、無視した方が相手の裏をかけたときに、上手くいくかもしれないというにすぎない。逆に固定観念を無視すると失敗の確率もまた上がる。これが厄介である。固定観念をまず理解しつつ、その場に応じて臨機応変に変えた方が良いのであろう。
石橋を叩いて渡れば、確かに石橋が崩れたときに被害は最小限にとどめられるが、他人に先んじることもまたできない。
次に、やはり組織はリーダー次第と言える。どんなに優れた部下を有していても、凡将の下では力を発揮できない。むしろ部下は普通でも従順に従う方が、有能な将に恵まれれば、組織としてうまく機能するともいえる。
(教訓)
〇固定観念を持つな。失敗する。
〇組織は所詮、リーダー次第。