「いいか、勝つのは強いものだ。正しいものじゃない。負けたら正義をどうこう言う資格どことか、生命まで失うんだ。その事を忘れるな」
「早く打つより正確に撃て!先に発砲するのも時によりけりだ。敵に自分の位置を知らせることになる」
殴られたものはいなかったが、それもイゼルローン駐留艦隊に所属していればこそで、他の部隊ならそうはいかないところである。司令官のヤンは、他の2件に関しては、むしろ軍律に甘い方だったが、二点、軍人が民間人に危害を使えること、上官が部下に私的制裁を加えること、については、別人のように厳格に対処した。あるとき、多くの戦場で武勲を立てた士官を、降等の上、同盟首都へ送還したことがある。一度ならず部下に対する暴力事件を起こした男で、その能力を惜しむ声もあったが、ヤンは耳を貸さなかった。
(解説)
最後に正しいものが勝つ、といって、その言葉が現実化された試しはない。結局、勝った者が後に正当化される。それが歴史というものだ。特に戦争においては、生死の問題になるから、プロセスだとか手段とかにこだわっている必要はない。死んだらすべてが終わる。負けても死なない限りは、最低限と言ったところだ。
仕事ではスピードと正確性は相反するものだ。早く正確には、不可能とは言えないが、絶対的に可能なものではない。その時に重要視されるのがスピードよりも正確性である。これは概ね正しい。しかし時と場合によってその重要性は変わる。将来が不確実な世界において、スピードが重要視されるときには、多少の正確性には目をつぶり、スピード勝負で、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるという戦法はある。だから、場面に応じて、スピードと正確性を使い分ければいい。決してスピードと正確性を同時に要求してはならない。但し、できる限り、と言う表現においては両者を比例させることもできなくはない。
ヤンの管理の仕方は正しい。軍人が民間人に危害を加える、上官が部下に私的制裁を加えることは徹底的に対処すべきと言う点を、ビジネスの世界に置き換えれば、会社が顧客を騙すて売るような行動、上司と言う立場を利用して、部下の様々なことを支配下に置こうと考えること、パワハラはその一つだが、これらは組織を破壊する行為であって、慎むべきである。
組織は、営業成績の良かったものを昇進させるが、管理能力が優れているかは別の話だ。優秀な人材に何が何でも管理させるのではなく、単に一兵隊でいた方がいいこともある。性格で選ばなければならない。なんで営業成績の良かったものを昇進させるかと言うと、一つは成績が良ければ営業の方法を部下に教えることができるというものであって、一理ある。しかしたまたま、時代が良かっただけかもしれないし、そもそもプレイングマネージャーを想定しているからだろうが、管理者がプレーヤーになる必要はない。だから、営業成績で営業部長にするという発想は、考え直したほうが良い。
(教訓)
〇会社が顧客を騙して売ること、上司が部下をその立場を利用して完全に支配下に置こうとすることは慎むべきである。
〇営業能力が高い人間を何が何でも管理者にする必要はない。営業マンとして成績がいいからといって、管理能力に優れているわけではない。あくまでも成績ではなく、管理能力で選ぶべきである。