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功労者は守れ

「吾々がヤンを追い詰めすぎると、逃げ場のないヤン・ウェンリーが、皇帝ラインハルトと手を結び、その麾下に入るとでもいうのか」
「彼が望まぬとしても、他に生存の方策がなければ、唯一の選択を強いられることもありましょう。彼を追い詰めてはいけません」・・・
「ではそれ以上にヤン・ウェンリーを処断しなくてはならないだろうか」・・・
「議長、私が問題にしているのは兵士たちの心情です、あなたの見解ではありません」
・・・チュン・ウー・チェン大将には、他にやるべきことがあり、深刻だが不毛な対話に時を費やしていられなかったのである。

「・・・予は、同盟政府の無能と不実を看過することはできぬ。故レンネンカンプ高等弁務官がヤン元帥の逮捕を要求したことは不当であった。同盟政府はその不当なることを予に訴え、同盟にとって最大の功労者たるヤン元帥の正当な権利を擁護すべきであったのに、強者にこびて自らの法をすら犯したのだ・・・一時の利益のためには国家の功労者も売る。直後にはひるがえって、予の代理者を売る。・・・」
「ヤン元帥に、事態の責任が全くないわけではないが、彼は被害者であり、自己の権利を守っただけである。ヤン元帥が予の元に出頭するなら、予は彼と彼の一党を厚く遇するであろう」

(解説)
前段は、同盟の現在のリーダーであるジョアン・レベロと軍のトップであるチェン大将の会話である。レベロは同盟政府の維持と言う目的もあるが、私利私欲ではないながらも、国家としての存立を重視し、個人の生命をも軽んじていた。ラインハルトのような存在こそが、民主主義のトップになるべきであろう。ただ、残念ながら民主主義のトップになる者は、概ねレベロのような人物である。まあ、まだましな方で、現実は、トリューニヒトのような私利私欲の塊のような奴だけが、政治のトップになるのは、古今東西変わらない。チュン大将はかなりの良識派であって、こんなバカに付き合ってられるかといった対応である。

後段は、同盟政府に対して、とどめの一撃になるラインハルトの再侵攻宣伝である。ラインハルトがレンネンカンプの行為の不当性を謝罪し、国家の一時の利益のために国家の功労者であるヤンを売ることを非難した。ときに味方をも自らの利益のために売る奴、いるんだな。例えば、粉飾決算で、経理の責任者がしたことだ、と逃げる奴。会社の決算は株主総会で報告することになっているし、代表がそれを承認しなければ、認められないはずだろう。

もちろん粉飾決算はいけないのだが、そういう下っ端を経営者は自らがしたことであると、守らなければならない。例え、実行犯ではないとしてもだ。そのような経営者は、もし、法によって処断されたとしても、従業員は見捨てない。

(教訓)
〇経営者は、どんな理由であれ、会社の功労者は守れ。
〇功労者を守るリーダーにはついて行く。功労者を切り捨てるリーダーには誰もついて行かない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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