世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

会社中枢部の心理的な距離を短くせよ

「つまるところ距離とは、軍事的には、輸送・補給・通信・指揮系統の全てを律するものであり、これらの困難度は概ね距離の増大に正比例する」

「距離の暴虐」は、人的資源の面からも、深刻な影響を与える。どれほど多くの征服者が、望郷と厭戦の念に堪えかねた将兵の反逆やサボタージュによって野心をくじかれたことであろう。「世界の涯まで」と叫ぶ征服者に、兵士たちは拒否の瞳を向けて答えた。「行きたければ、あなた一人で行くがいい。私たちは故郷に帰って家族のもとで死にたいのだ」と。古代には、風土の差からくる疾病が、肉体をも害した。現在はそれがないだけ良いかと言えば必ずしもそうではない。頭上に振り仰ぐ星座の形が異なるのは、長い間には兵士の心を蚕食する。帝都オーディンから1万5千光年、ラインハルトの心には、決して遠い距離ではないが、兵士たちの心が羽ばたく距離は、ラインハルトよりはるかに短いのだ。それにしても、オーディンを根拠地とする限り、同盟への遠征、またそれが完了して後の支配に覇、「距離の暴虐」が付きまとうであろう。

(解説)
通信手段の発達によって、距離のデメリットが次第になくなってきている。輸送や補給のような物理的な移動は、簡単には縮まらないが、通信や指揮系統については、通信手段が大幅に縮まった。但し、指揮系統については、まだ戸惑いがあるであろう。それも単に仕事の依頼というだけであれば、戸惑う必要はない。やるべきリストを共有して、タイムリミットを決めて、仕事を完了してもらえばいいだけである。

上司と部下の距離は、通信手段の発達によって、頻度を高めることはできても、心理的な距離を縮めるのは、通信テクノロジーでは限界がある。さらに経営者の思いと、従業員の思いには、天と地ぐらいの差がある。経営者が1兆円企業を標榜しても、従業員からしてみると、そんなことよりも休みくれよ、もう少し給料上げて、手当増やして、くらいのミクロな野望で精いっぱいである。

全員が経営者と思いを一つにして、とは言いようがないが、せめて幹部連中くらいはどこまで会社を成長させるかについて、共有しておくべきであろう。従業員は育ち、中には巣立っていき、中には幹部になるものもいるだろう。しかし幹部連中の思いと言う距離が遠ければ、組織としてまとまりを欠いてしまう。三畳一間の仮事務所で経営者が一人だけ年商1兆円企業を目指す、といっても、他のスタッフが、まるでそんなイメージを持っていないという事は良くある話だ。そんなときには、間違いなく、あんただけ勝手に目指しゃいいじゃんよ、とどっちらけ状態になる。なぜ年長1兆円があげられるのか、イメージできるまで説得し、小さくでも実績を上げていこう。

(教訓)
〇通信手段の発達によって、指揮命令の距離も短くなるが、心の距離が短くなるわけではない。
〇経営者一人が年商1兆円をイメージしても仕方がない。それがイメージできるように、説得や実績を積み上げろ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする