世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

忠誠心は価値を理解できる者に捧げるもの

逮捕されたシュトライトは、電磁石の手錠をはめられて、ラインハルトの前に引きずり出され、尋問を受けた。
「卿はブラウンシュヴァイク公に、このラインハルトを暗殺するよう勧めたという噂だが事実か」
「事実です」
「なぜ、そのようなことを勧めたのだ?」
「あなたを放置して置けば、今日このような事態になることが明白だったからです・・・」
「殺すには惜しい男だな。通行許可証を出してやるから、ブラウンシュヴァイク公の元へ行って、卿の忠誠を全うするがよい。」
「もし、わがままを聞いていらいただけるのでしたら、このままオーディンに留まるのをお許し下さい」・・・
「わかった。では、いっそ私の部下にならないか。少将にしてやるが」
「ありがたいことですが、今日までの主君を明日から敵に回す気にはなれません。お許しください。」

フェルナー大佐の方は、・・・主君のブラウンシュヴァイク公を見限ったからあなたの部下にしてくれ、と申し出た。・・・
「すると、卿の忠誠心はどういう判断によって、卿が年来の主君を見捨てることを許したのだ?」
「忠誠心というものは、その価値を理解できる人物に対してささげられるものでしょう。人を見る眼のない主君に忠誠を尽くすなど、宝石を泥の中へ放り込むようなもの。社会にとっての損失だとお考えになりませんか」

(解説)
シュトライトとフェルマーはブラウンシュヴァイク公に対し、ラインハルトの暗殺を具申したが、結局はラインハルトに捕まった。その後は、シュトライトはラインハルトの配下になることを拒み、フェルマーは進んで配下になった。どちらが正しいかというよりは、その人の生き方の違いである。

いずれにしても、ラインハルトとしては、どちらも質問に対する回答が合理的であったので、部下になることを勧めたのだろう。しかし、フェルマーに対して、なぜ主君を見捨てたのだ、ではなく、卿の忠誠心は、見捨てることを許したのか、と言う言い方をしていて、非常に嫌らしい。より心に来る言葉だ。

それに対するフェルマーの返答も中々しゃれている。人を見る眼のない主君に尽くすなど宝石を泥の中に放り込むようなものだと、自分のことを宝石とアピールしているのも興味深い。確かに自分を宝石と思ってくれないリーダーの下で働いても、上手く使ってくれることはない。自分の本当の能力を生かしてくれるリーダーのところで働かないと、人生は本当に無駄な時間で終わる。

(教訓)
〇人を主語ではなく、人以外を主語にして、その人の心を表した方が、強烈な物言いになる。
〇忠誠心は自分の能力を認め、最大限に生かしてくれるリーダーに対して捧げよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする