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権限争いが起こる組織は、ある意味で本物。それを乗り越えて真の組織となる。

「ロイエンタール元帥、卿の統帥本部総長の任を解く」
無音のざわめきは、急激に可聴域にまで高まろうとしたが、最初の宣告に続くラインハルトの声は、冬バラ園の全域で人々の不安を散らせてしまった。
「かわって卿に命じる。わが帝国の新領土の総督として惑星ハイネセンに駐在し、旧同盟領全域の政治及び軍事を悉く掌管せよ。新領土総督は地位と待遇において各省の尚書に匹敵するものであり、皇帝に対してのみ責任を負うものとする」
うやうやしく頭を垂れたロイエンタールの秀麗な顔に血が上っている。軽い処分などというものではない。想像の地平の向こうにのみ存在した栄光が、彼の前に拝跪している。金銀妖瞳の角度をやや買えると、黒と青の瞳に友人の姿が移った。自分自身のことのように、ミッターマイヤーは喜色を浮かべている。
・・・むろん、軍事面においては、はるかに軍務尚書を凌駕するものであった。

・・・「成功しなくてもよいのだ。たとえ未遂でもそのような暴挙が企図されたというだけで、十分に効果がある。金髪の孺子も、前進と上昇だけが奴の人生でないと悟るだろう。奴の権勢は拡大の一方で空洞化しつつある。奴は膨張する風船の上に立っているのだ」

(解説)
ロイエンタールの謀叛疑惑は、ラインハルトも裏でフェザーンのアドリアン・ルビンスキーが意図を操っていたことは分からなかった。表面的には、軍務尚書のオーベルシュタインらの戦略と思えなくはなかったためか、最初の一言は、現職の任を解くという衝撃的なものではあったものの、逆にオーベルシュタインよりも権限を強化する結果となった。噂が出て得をするのは誰かを考え、その得をしたやつをぎゃふんといわせることで、つまらない噂を二度と出さないようにするには良い方法である。

しかも、自分は疑われていると思った、ロイエンタールにとって、逆に地位を高められれば、より意気に感じることは想像に難くない。通常であれば、より皇帝に対する信頼度が高まることになるだろう。組織において内部で争うことにリソースをかけている場合ではない。競争相手は外部の企業であり、外的と戦うために全リソースを捧げるべきである。

もっとも、結果は、ルビンスキーの策略に乗せられて、内乱が発生することになる。通常企業で内乱が起きる場合は、いわゆる権限争いであるが、その企業の事業に旨味があることを前提として、外敵が大したことがないか、そもそも外敵から相手にされるレベルにない企業で起こる。内乱が起こった時には、組織改革のチャンスともいえる。概ね、現経営陣の反対側の一掃につながるだけなのだが、ルビンスキーの言うように、拡大する企業は、膨張する風船の上にリーダーが座っているだけのことがある。うどんやそばのようによく練らないと腰の強い組織にはならないのだ。

(教訓)
〇ある人に悪い噂が立ったら、噂を立つとメリットがある奴よりも、悪い噂を立てられた方を重んじよう。ばかばかしくて下さない噂を立てさせないことも重要である。
〇組織は、うどんやそばのようによく練って、腰を強くせよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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