「オフレッサーを貴族共の本拠地に送り返すのです。もちろん無傷で」
「ばかな!・・・あれだけ苦労して、多くの部下を死なせて、ようやくとらえた猛獣だ。それを自由の身にしてやると卿は言うのだ。どれほど寛大な処置をとっても、次の戦場では奴の戦斧が味方の血を大量に吸うだろう。かけても良い位だが、そんな賭けに勝ったところでしようがない。生かしておく必要を認めぬ。即刻、処刑すべきだ」
ラインハルトはオーベルシュタインの声を遮った。
「卿らもわかったろう。ここはオーベルシュタインに任せたい。・・・」
・・・「貴様一人生きて帰ったのは、裏切って、金髪の小僧に両親を売り渡したからだろう。恥しらずの犬めが!わしの首を持ち帰るとでも奴に約束したか」
「撃て!撃ち殺せ!」
ブラウンシュヴァイク公が叫んだ。その命令は秩序より混乱を呼んだ。
・・・この事件の後遺症は大きかった。オフレッサーはラインハルト嫌いの急先鋒であったはずだ。それさえ裏切ったとあれば、誰が最後まで志操堅固であることができるのだろう。貴族たちはお互いに不信の眼差しを交わし合い、・・・
(解説)
ラインハルトの命令で、狂犬オフレッサーを命からがら捕えたロイエンタールとミッターマイヤーだが、もう二度と上手くいくわけがない、それをオーベルシュタインは無傷で敵陣へ還せという、激怒してもやむを得ない。それをオーベルシュタインの意図を本人の口から語らせ、功労者である部下をなだめる。リーダーも楽ではない。
そして、結果はオーベルシュタインの予想した通り、貴族間の不和を生んだ。まさに、どんなバカでも使いようというわけだ。
バカと言うのは失礼だが、どんな人材も、使い方が悪いだけで、使い方さえ間違えなければ有効に働くのが人間なのだ。ただ、どんな優秀な経営者であっても、どんな人間でも使いこなせるわけではない。ただ、どのように使うかを貴重な時間を使って考えてみても良いかもしれない。むかし5時から男♪という宣伝があったが、そんな使い方も?この例は今どきではないけれども・・・。
上記例では、まさに人間魚雷的な使い方である。昔、中国では疫病にかかった人間を敵国へ行かせたり、あるいは疫病にかかった死体を敵国において来たりして、敵の国力を弱めるために使った例がある。死体でも立派な戦力なのだ。
(教訓)
〇組織にとって役に立たず、これは使えないという人材であっても、何かに使えないかをよくよく考えてみよう。
〇死体でも立派な戦力になる使い方はある。生きている人間ならばもっと有効に使えるかもしれない・・・と頭を柔軟に考えてみよう。まあ、考えるだけ時間が無駄なことが多いが・・・