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忠誠心をスタッフに要求する前にやらねばならぬこと

「砲撃しろ!」
命令を聞いた砲術士官は己の聴覚を疑った。
「ですが、閣下、あれは味方の輸送艦隊です。それを撃つなど・・・」
「味方なら、何故私の逃げ、転身するのを邪魔するのか。かまわぬ、撃て!撃てというのに」
非武装の輸送艦隊が、逃亡ルートを確保しようとする味方によって砲撃されたのである。

キルヒアイスはガルミッシュ要塞を包囲し、攻略戦の準備を進めたが、そこへ捕虜の一人が面会を求めてきた。・・・
「閣下のお役に立てると思います・・・私はリッテンハイム侯が逃走のために部下を殺した事実の生証人ですよ」
・・・
「リッテンハイム侯に対する忠誠心は、もうないわけだね。」・・・
「・・・ある種の人間は、部下に忠誠心を要求する資格がないのだ、という実例を、何百万人もの人間が目撃したわけですからね」

(解説)
リッテンハイム侯の軍隊は、5万隻、対するキルヒアイスは800隻という戦力差にもかかわらず、相手を敗走させたのは、リッテンハイム侯の軍隊が烏合の衆だったからだ。しかも、その攻撃から逃れるために、味方の輸送艦を撃破して、自らの逃走ルートを確保した。当然味方の輸送艦に乗っていた兵士は犠牲になった。

自分さえ生きていればお家の断絶が守られるといわんがばかりに、トップだけが逃げ、部下を置き去りにしたり、犠牲にしたりはあるが、そんなことで守る家とはなんだろうか。そんなものは昔の話とは言えない。今でも経営陣が自ら生き残るために、テンポラリーのワーカーを切り、正社員も切り、生き残ろうとしているではないか。

一見合理的な判断にも思えるが、組織を残すためであればまだしも、組織のトップを残すための犠牲と考えていないだろうか。そういった部下を切って生き残ったトップ率いる組織で、みんな働きたいと思うだろうか。もちろん、人件費などのコストダウンのために、切らなければならない場合もあるだろう。そのときは、自らの報酬をゼロにしてまでも、組織のために身を粉にして働かないと、忠誠心を要求する資格などないのである。忠誠心を部下に求めるならば、部下こそ大事にしろ。それができないならば、お前が辞めろ。代わりなんていくらでもいる。

(教訓)
〇部下に忠誠心を要求する前に、部下を大切にすることから始めよう。テイクアンドギブだ。
〇部下を大切にしないリーダーがトップにいても、そのトップに、組織で残った人材が心から従うはずはない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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