「つまり奴らはブラック・ホールを後背にして布陣しているというのだが。どういうつもりだ」・・・
「後背に危険地帯を控えるということは、攻撃する側にも、攻撃法の幅を狭くさせます。後背へ迂回できないのですから、それが狙いでしょう」・・・
双方が射程距離に入ったのは、・・・まずヤン艦隊が一斉に光の束を敵に投げかけ、・・・だが確実なペースで帝国軍は前進を続け、同盟軍は、・・・力不足という体で押されていく。シュタインメッツは、はやる心を抑え、凹形陣の両翼をのばして、静かに、だが断固として半包囲の態形を整えていった。
戦況が一転したのは、・・・それまで帝国軍に押されて半包囲下にあると見えた同盟軍が突如として急進を始め、激烈な砲火と機動力を駆使して、ほとんど一瞬にシュタインメッツ艦隊の中央を突破したのだ。さらに突破を果たした同盟軍は敵の後背で左右に展開し、帝国軍をブラック・ホールへ向けて押しまくり始めた。
これは完璧なまでに成功した「中央突破・背面展開」戦法であった。シュタインメッツの、凹形陣からの半包囲戦法が、全くの逆効果となったのである。むしろシュタインメッツは、計算建てた陣形等取らず、地の利と力に任せて正面から並列前進すべきであったのだ。・・・シュタインメッツは一流の指揮官であったから、より完全な勝算を求めて陣形を作り、それが致命傷となったのである。
(解説)
帝国軍のシュタインメッツとヤンの戦いである。通常、背水の陣のような陣形は、火事場のクソ力を出させるための手法であるが、シュタインメッツの参謀であるナイセバッハは、後方からの攻撃を避けるため、と言っている。これもまた確かだろうが、そこにヤンの狙いがあった。凹型陣形になれば、中央突破がしやすい。それで、突破をした後、ブラック・ホールを背にしたのが、むしろシュタインメッツの方になってしまった。このような背水の陣の使い方もある。シュタインメッツの後方に応援部隊があったら、挟撃されるリスクがあったろう。一応、中央突破後に後背に帝国軍があったそうだが、オペレーターによると3時間前後で到達との計算だったので、2時間で敵を破り、1時間で逃げ出すことにした。
勝率を高める方法をとるのは、悪いことではないが、あまり考えすぎると、かえって、敵の術中にはまるということか、何も考えないのは悪そうに思えるが、時と場合に因るのであろう。地の利にあった戦術が重要ということでもある。
(教訓)
〇考え過ぎないで行動することも大切。
〇地の利にあった戦術が重要。