「姉が陛下の寵愛を受け、そのおかげで楽々と16、17歳で大佐になれるような奴に、わしの苦労がわかる者か。上官の理不尽に耐えてようやくここまで来たわしの気持ちがわかるものか。わしは娘の夫に夢を託したが、彼も戦死した。わしは彼の夢をもあわせて孫のために邪魔者を取り除いてやったのだ。どこが悪いのだ」
この種の侮辱と曲解を蒙って、平静を保ちうるラインハルトではないはずであった。・・・
キルヒアイス自身も、意外な心理作用を自身の裡に見出して、やや戸惑っていた。彼はふと思ったのだ。ラインハルトを憎悪する資格を有する者がいるとすれば、それは現在の社会体制において特権をむさぼり、弱者を虐げている門閥貴族共ではない。現在の社会体制の枠内で、ささやかな地位の向上と待遇の改善を望むような人々こそが、ラインハルトを敵視するかもしれないのだ。
・・・
ラインハルトは遠く高みを目指して飛翔しようとしているが、血を這いずり回り、似通った境遇の者と共食いをすることでしか幸福を追求しえない者もいるのだ。
(解説)
ライフアイゼンを殺した犯人は、校長であった。自分の孫を首席で卒業させるために、それ以上の成績を残していたために殺害したという。ラインハルトの真の敵は、ゴールデンバウム王朝と、特権をむさぼって弱者を虐げている門閥貴族たち。しかし、敵は敵は他にもいると思った方がいい。つまり、ラインハルトが出世するのを羨む、一般人なのである。
そもそも自分が敵であると思ったとしても、その敵から自分のことを敵だと認識されているかというと、そういうことはなく、まるで相手にされていないのが現実だろう。敵だと認識する相手というものは、直接の利害関係を有する同じレベルのものか、自分の下のレベルで、自分の活躍を羨む者なのである。
レベルが同じもの同士がいがみ合う構造である。ある者がギャーピーと騒いでいるときに、その騒いでいる奴に対して、反発心を持っているという事は、即ち、同じレベルであると認識しているのだ。こちらが同等レベルだと感じていなければ、何を言われても平気だろう。
とにかく敵視され、それをウザいと思うならば、自らより高みへ飛翔するペースを上げるしかない。同等レベルだから、同じ空間にいざるを得ないのだから。
(教訓)
〇敵は同じレベルか、下のレベルであることが多い。
〇自分よりレベルの高い人間からは、こちらが敵視していたとしても、まるで相手にされていないことが多い。
〇誰かから敵視されており、それをウザいと感じるならば、さっさと飛び立ち、同じ空間にいないようにせよ。見えなくなれば敵視されなくなる。