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理想が組織を滅ぼすときもある

「ヤン・ウェンリーは何かと欠点の多い男ですが、何者も非難しえない美点を一つ持っています。それは民主国家の軍隊が存在する意義は民間人の生命を守ることにある、という建前を本気で信じているということです。」
「エル・ファシルでもそうだった。イゼルローン要塞を放棄するときもそうだった。一人として民間人に犠牲を出しておらん」
・・・
「貴官の言いたいことは分かるつもりだ。ヤンが敗北するとしたら、それはラインハルト・フォン・ローエングラムの偉大な天才によってではない」
それはヤン自身の理想へのこだわりによってだろう。・・・

(解説)
ヤンの何物も否定しえない美点とは、「民主国家の軍隊が存在する意義は民間人の生命を守る」というものである。どうも最近は、為政者を守るために存在しているのではないかと、民間のでも鎮圧で軍隊が出動する際に思ってしまう。全体主義国家としては当然なのだが、民主主義国家がそうであってはならないのは自明の理である。

会社の経営者がコロナショックで行うことは、これはまたやむを得ないともいえるが、会社組織を維持するために、弱者を切り捨てるという姿勢である。役員報酬を10%下げましたなんて言って、やることをやっていると思っているアホさ加減には笑えてくる。削減するのはむしろ90%じゃないだろうかとさえ思う。それで悲しいかな、何十名の雇用が十分に守れてしまう。

会社組織を守るために、従業員に犠牲を強いるのは最終手段であろう。人を切る以上にみんなで給料削減を享受するのが最初だと思うが。こんな時期に、上司は自宅待機を命じてくれて物分かりがいい、という評を聞くが、自宅待機を命じて、給料削減を始めたら、物分かりがいいという他人事を言えるのだろうか、はなはだ疑問である。当然、テレワークになり、それだけ仕事が滞るとすれば、会社の売上が下がるわけだから、最終的には従業員の給料に手を付けざるを得なくなるのも、経済的にやむを得ぬ話なのだ。良い事とは思えないが、7~8割、みんな手取りが減る社会に慣れざるを得なくなってくる。繰り返すがそれが望ましいといいたいわけではない。縮小均衡は必要以上に加速度的に消費を消滅させてしまう。

犠牲を出さないという理想を追求して、誰かに犠牲を丸抱えさせてしまうのは良くない。雇用人数を守れば一人当たり人件費を下げなければならないという当たり前のことを守れるかどうか、理念の追求がときに会社組織を崩壊させてしまうこともありうるのだ。どんな理想を追求するのか、それによって捨てざるを得ないのは何か、守るべきなのは何か、経営者として考えなければならない。ただ言えることは、従業員の犠牲をなるべく最小限にとどめるという姿勢であることは間違いがない。決して自己保身を図ってはならぬ。それが経営者としての役目である。経営者は組織を守ることが第一、自分を守ることは圏外である。

(教訓)
〇経営者が自ら守るべき理想にこだわっていては、会社を守れないこともある。
〇経営者は守るべきもの、捨てざるを得ないものを選別し、犠牲を最小限にとどめる努力をせよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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