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自らの長所は普段使うな

「ヤン・ウェンリーの真の偉大さは、自身、艦隊決戦の名手でありながら、その限界を良くわきまえ、自らの長所におぼれることのなかった点にある」
・・・両者は艦隊決戦を戦略の実施レベルにおける局面の技術の表れとしかみなしていなかった。敵と比較して、より強大な戦力を整え、補給を完全にし、情報を多く収集しかつ正確に分析し、信頼しうる前線指揮官を任用し、地理的に有利な位置を確保し、開戦の時機を選ぶ、それらをやっておけば、一度や二度の戦術的敗北など論評にも値しない。最高司令官の任務はただ一つ。全軍に対して言うだけである、「油断するな」と。

(解説)
どんな優れた人間にも限界がある。自分の限界を知っておくということも、経営者としては不可欠な要素である。

そして誰しも長所がある。この長所があれば、いざというときには最後の砦にもなりうる。これだけは誰にも負けないというものを持つことは必要ではあるが、その長所があると、それに頼ってしまうこともありうる。ピッチャーの決め球のようなものだが、いざ、その長所が撃ち砕かれたときにどうするかも考えておくべきだろう。

そのため、その長所はいざという時にしか使わずに、普段は長所をあまり使わずにしておくのが望ましい。長所とは伝家の宝刀でしかない。抜かないのが一番である。いざという時にしか使えないと思えば、それを使わずにどうするかを考える。選択肢の幅が広がる。

上記例で言えば、所詮、長所は、戦略の実施レベルの局面の技術の表れでしかない。そのために、戦力を整備し、ロジスティクスを完全にし、情報を多く収集し正確に分析し、信頼できる前線指揮官を用い、地理的に優位な場所で戦い、さらにはベストなタイミングを選ぼうとする。仮に長所が打ち砕かれても、全く意に介する必要はない。

経営者として、「油断するな」とだけ言っておけば済む。組織も、個人技に依存しないようにしなければならぬ。そして、自らの、そして組織の限界もまた知っておくべき必要があろう。限界は超えろ、とも言うが、越えられないときのことも考えておけ。それが経営である。限界を無理に超えるのは、経営者自分自身だけにしておけ。

(教訓)
〇長所は伝家の宝刀として普段は用いるな。
〇経営者は部下に対し、油断するな、と言えるだけに、組織を整備しておく責任がある。
〇経営者は、個人技に依存するな。事業を組織的にこなせ。
〇限界を部下に強要するな。自分だけは限界を超え続けろ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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