「ねえ、ロバート・・・もうボディ・ガードなんて仕事はやめにしたら・・・ここの管理の仕事をしてもらってもいいんだし・・・」
「ありがとうよ、エリザベス・・・俺はこの仕事が好きなんだ。お払い箱だって言われるまでは続けさせてくれよ・・・」
「あた、この前、仕事をしくじってもうボディ・ガードはやめたって、言ってたんじゃないの・・・?」
「俺にはこれっきゃ能がないんだ!」
(ストーリー)
老齢のロバート・ブレディがハロルド・エマーソンのボディ・ガードの仕事を受けた。誰か逆恨みして、ニュージーランドでひと月も海岸のコテージで一人きりになり、チェス相手のボディ・ガードを求めていた。
ブレディはコテージの周りを見た。かなり遠くにコテージがあるが、距離がありすぎるだけでなく海はうねりが強すぎ、強い横風が吹いている。他に身を隠す場所がない、と確認した。
ブレディはチェスが弱すぎるため、エマーソンは電話回線(懐かしいダイヤルアップ)を通じて遠くの対戦相手を求めた。最初の対戦は引き分けに終わった。
そして何とコテージにゴルゴが現れた。ブレディは狙撃者だったとしても射程距離に入ること、スコープに捉えること、風がないこと等の条件が合わない限り、引き分けになると言った。エマーソンは株の売買を巡ってもめているUSエクセル社が殺し屋を雇ったと考えていた。
ある日、回線の対戦で、ロバートが苦戦した。ロバートは外の空気を吸ってくるといって、ベランダに出た。その瞬間、ゴルゴに狙撃された。ハロルドはその時に風が凪いでいることに気づいた。そいてチェスの対戦相手がゴルゴであると推測した。ゴルゴはエマーソンの対戦の癖、追いつめられると外に出ることを調査していたのだ。
(解説)
「メイティング・マテリアル」の一幕である。ボディ・ガードのハロルドはゴルゴに直接銃を向けていなかったので、狙われなかった。他人からもう使えねえよと言われるまで働く。死ぬまで仕事ができればこれほど楽しいことはないし。そういう仕事に巡り合えるかが人生において重要だ。定年退職で後は余生、もう二度と仕事をしたくないと思うのは、その仕事が他人から与えられたものだったからだ。そして失敗をして恥をかいても、なおその仕事を続けたい、そう思える仕事に巡り合えたら本物だ。
[教訓]
〇普通は失敗したら、嫌になるが、それでもこの仕事を続けたいというものが本物である。