「彼女は今、アメリカへの亡命を希望している・・・だが、私は彼女にアメリカへ来てほしくないのだ・・・彼女がアメリカに来れば、ABCに入ることになる・・・しかし、一つのバレエ団に二人のプリンシパル・ダンサーはいらないからだ。と言って、彼女に他のバレエ団に行かれても困る・・・そうなると、ミハイル・レシオフスキーが一緒にABCをやめてしまう。レシオフスキーがいなくなればABCは潰れてしまうだろう。」
(ストーリー)
ソ連のナタリア・パブロワがパリへ派遣して、アメリカン・バレエ・センター(ABC)と共演することになった。演目はジゼル。アルプレヒト王子は、かつてナタリアを踊ったことのある、ソ連から亡命したミハイル・レシオフスキーであった。
再会したレスオフスキーとパブロワは食事を共にして、昔話を語らった。しかしパブロワにはソ連の監視が付いていた。その監視を振り切って、レシオフスキーはパブロワにも亡命を勧めた。
ABCにはプリンシパル・ダンサーのアニタ・シンクレアがいた。ABCの会長マックス・モーガンがかわいがっていた。レシオフスキーがパブロワの亡命を会長に話した。ナタリアをABCに入れてもらえなければABCをやめるとも伝えた。このままではアニタの活躍が奪われると、会長はゴルゴに依頼し、ナタリアとレシオフスキーがデートをしている最中に、ハイヒールのかかとを狙撃、階段を転倒したナタリアは足を痛め、ジゼルの講演は辞退せざるを得ず、モスクワへと帰っていった。レシオフスキーがABCをやめ、人気ダンサーがいなくなってしまい、ABCは倒産したという。
(解説)
「幻のジゼル」の一幕である。ABCの会長モーガンはダンサーのシンクレアを愛人にしていた。シンクレアを守りたい。レシオフスキーは手放したくない。パブロワがABCに入社されても困る。
大抵、あれもこれもみんな全部欲しいーと言い出すと何も得られない結果になる。優先順位を決めて、どれかだけ守ればいいことになる。結果、モーガンはシンクレアしか守れなかったが、レシオフスキーという金を生むダチョウを逃すことになり、ABCも倒産、必然的にシンクレアも守れなかったことになるだろう。戦略的には、パブロワの亡命を受け入れ、レシオフスキーをABCに残し、シンクレアはダンサーではなく、愛人として残した方が、きっと、より多くの望みを叶えられたものと思われる。
[教訓]
〇とにかく一つだけ何かを守れ、後のものは犠牲にしてもいい位で望め。犠牲にするものを作らないと何も手に入らない結果になる。犠牲とはビジネスにおけるコストのようなもの。コストをかけなければ売り上げは立たない。
〇多くのモノを望むな。望まぬ者が望みをかなえる