「いや・・・あいつも今ならば、やり直しがきく。しかし、一度フロリダに行ってしまえば一生中途半端な夢を追いかける人間になってしまう。わしは、そうやって人生を棒に振ってしまった人間を、嫌というほど、見てきているのだよ・・・」
(ストーリー)
ドミニカ共和国にアメリカ大リーグの野球選手養成学校がある。ここからまずはフロリダへ向かうことになる。そこにパブロという将来有望な選手がいた。
校長アベラは、アメリカに呼ばれたが、キューバ政府はパブロを殺すわけにはいかない。しかしアベラにはパブロをフロリダに行かせたくない理由があった。アベラはフロリダで、ジェーンという寝たきりの女性に会いに病室に行った。ジェーンはパブロの父が好きだったが、パブロの父は反革命的な人間であり、アベラはジェーンに夢中であったが、党の出世コースに乗るために、ジェーンを捨て、それが原因か、自殺を図った。パブロの父に対する気持ちがあって、パブロの才能は買いながらも、フロリダには行かせたくなかったのだ。
キューバ革命戦士であり、モスクワに留学してきたキューバ人の中で優秀な経済学者であったパブロの父は、モスクワで獄中にあった。ロスポローチは息子の命がアベラに狙われていることをパブロに知らせに来た。そこでアベラはキューバ革命時の秘密資金の譲渡を条件として、ゴルゴを雇うことにした。
アベラは最後の練習試合で、誰をメジャーリーグに送るか決めるとしていた。誰もがパブロを送るべきだと考えていたが、アベラはロドが今日の試合で完封したら、フロリダに送ると約束をした。ロドが完封を決めた瞬間に、ゴルゴはアベラを射殺した。
結果、ロドとパブロの二人がフロリダに送られることになった。
(解説)
「カリブの夢」の一幕である。校長のアベラが、ロドという投手の才能を知り、今ならば、夢をあきらめて他のことをやらせられると考え、アカデミーの職員に語った台詞だ。
子供の頃からの夢を持っていた人は、それが叶ったことがあるだろうか。概ね叶わないことを知り、どこかで完全に夢を捨て去って、現実的な路線で生きていくことになる。それでも夢を捨てきれない人には、概ね、経済的な不幸が待っている。夢に拘って、達成しようと多くの時間を無駄にする。
夢を追うことは悪いことではないが、どこかで現実的な物の見方をしなければならないことはある。趣味でいいではないか。生きていれば、別の夢を持つこともできる。もちろん夢がかなわないからと言って、諦めた方がいいといっているわけではない。他のことを捨ててまでこだわることはないということなのだ。
[教訓]
〇夢は追え、但し、拘るな。その夢を現実的な物として描けるまで、別のこともしておけ。