宮本武蔵に学ぶ、
「他流において、数多くの太刀の使い方を人に伝えていることは、兵法を売り物に仕立てて、太刀の使い方をいろいろ知っていることを初心者に関心させるためだろう。これは兵法で最も嫌うべきことである。」
「人を斬るのに色々な方法があると考えるのが誤りである。人を斬るということに変わりはない。兵法を知るものも、知らないものも、女子供であっても、打ち、叩き、斬ること以外には突くこと、薙ぐことがあるだけである。とにかく敵を斬ることが兵法の道であれば、その方法に多くの使い方があるべきはずがない。」
(解説)
今の格闘技系のスクールでも、技が豊富な方が教える方も教えた気になるし、教えられた方も教えられた気もするし、しかも強くなったと錯覚することだろう。初心者であれば初心者であるほど喜ぶ。しかし実践には到底使えそうにない。初心者であれば、たった一つの技にでも磨きをかけた方が、間違いなく実践には使える。数多くの技よりは、必殺の正拳突きのみ。女性の護身用には、金的キックがいいだろう。一番効果的だ。
ビジネスの場合、あれもやりますこれもやります。何でもやります。ではお客様が頼みようがなくなってしまう。そんなラインナップの多さで勝負をしても、お客様はよくわからないのだ。そんなことよりは、「これだけはお任せください」の「これ」だけでお客様にアピールした方が、はるかにお客様の心に届く。
お客様にとっては、別にこれもあれも欲しいわけではないのだ。特にネット広告の場合には何かを望んで、お客様はググる。その何か、というお客様が求めるモノが一つあれば、お客様は業者のドアを開く。
中小企業にも関わらず、会社のホームページで総合商社並みのラインナップを書いてあるところがある。それも今一つ訴求ポイントが見えてこない。要するに何屋であって、しかも自分にとって有用なサービスを展開している、という自分ゴト化が見えないサイトでは、それもまた、離脱されてしまう。
その点、会社もゼネラリストよりもスペシャリストが望まれる社会となった。同じゼネラリスト的なサイトの作り方であれば、まだ「ワンストップサービス」の方が良いだろう。サービスによっては複合的に展開せざるを得ない場合もある。このような言葉が書いてあれば、「任せておけば、何でもやってくれるのね」と利便性が高そうに思ってくれる。
しかしながら、ネット時代においては、ワンストップサービスよりもワンポイントサービスの方がよいし、シンプルさが一番だ。
どんな剣術の書籍よりも五輪書が喜ばれるのは、「斬る」ことに全てを集中させているからの他ならない。これがこういう構えて、こういうときには剣を甲振り下ろしてなんて技術論を書いていたら、これまで愛される書物になっていなかったに違いない。
主張は「とにかく斬れ」なのだ。
[教訓]
〇ビジネスはシンプルに考えた方が上手くいく。
〇シンプルな方がお客には伝わる。