世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

成功するために恐れてはならないこととは

織田信長に学ぶ、

1570年における織田信長の撤退戦。織田信長が越前の浅倉義景を攻撃したが、浅井長政が離反し、朝倉方に就いたとの情報が入り、最初は信長も信じなかったというが、信じざるを得ない状況になり、木の芽峠に進軍すれば腹背から責められ、挟撃されると考え、信長はしんがりとして金ヶ崎城に秀吉と光秀、池田勝正の軍を残し、信長本陣を退陣させるまで撤退戦を行った。

近江豪族の朽木元綱を、従軍していた松永久秀が説得したとも言われ、朽木の協力で京へ逃げ延びることができたという。その他、池田勝正の統率力、光秀や秀吉の命がけの戦い、朝倉本隊の追撃が鈍かった。あるいは信長軍の撤退が迅速であったために十分な追撃が行えなかった、等が考えられている。

(解説)

撤退戦は難しい。その地域を保持できないという負の意味合いが強く、作戦地域に残っている部隊は戦闘力の低減が避けられず、一時的に危険な状況に置かれる。そこで戦争状態に置ける撤退では、余力のある時に速やかに行うこと、相手にわからないうちに撤退することが重要だ。

今どきの企業経営では攻めてくる相手もいないわけで、撤退したからと言って命が取られるわけではない。そのため撤退はこそこそやらなくてもいい。こそこそやらなければならない撤退は、夜逃げくらいなものだ。

さて、企業において、撤退を難しくするのは、今までかけた投資金額がもったいないという思いが先に立つことだ。しかし、どんどん赤字が膨らんでいくわけだから、正直余裕がなくなる。それどころか撤退にはお金がかかる。例えば、ある飲食店舗から撤退するときには、半年前に退去願いを出すか、あるいは半年分の家賃を支払って出ていくことになる。考えても見れば、撤退を決めてなおかつ家賃も払って、出ていくと決まっているのに、モチベーションだって上がらない。少しでも工夫をして売り上げを上げようという気になるわけがない。また、原状回復の費用だってかかる。ただでは退去ができない。そのため、撤退を決めたら、速やかに行わなければならない。この辺は戦争における撤退と同じである。

まず撤退基準を当初より考えておいた方がいい。長年同じことをやっていると、ここまでやってもダメなら、もう売り上げが伸びないなと言うのはよくわかる。その点、素人の方が無駄に粘ってしまうかもしれない。そうして損失が膨らんでいく。この辺は企業の財務体力にもよる。目安としては半年やって損益分岐点に達しない、あるいはその見込みがなさそうであれば撤退すると決めておいた方が良かろう。いわゆる損切だ。長くやればやるほど、どこかでチャンスがとは思わない方がいい。特に飲食店の場合、ロケーションがモノを言うことが多い。固定費の家賃がバカにならないから、撤退は早い方がいい。

撤退に当たっては、撤退するまでのコストを計算しなければならない。それまでの資金繰りを念頭に置いておかなければならない。借入が不可能であれば、撤退を早めざるを得ない。とにかく、事業には損切が必要で、粘ってもいいことはないと知ることだ。もちろんあきらめが速いのも考え物で、その辺は自分の懐具合と相談して決めればよい。撤退の計数的な基準を一般化するのは難しい。

[教訓]

〇撤退するか否かの判断早めに。

〇撤退を決めたら、コスト計算を行い、いかに撤退コストを削減するかを考えよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする