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絶対安全の中に潜む失敗を見抜く心構えとは

織田信長に学ぶ、

「絶対は絶対ない」

ここで、経営学の巨人ピーター・ドラッカーの言葉を取り上げてみよう。

企業経営というものに唯一「絶対」の答えはない。「見直し」が必要である。

『企業とは何か』

優良企業が成功している時期は、そのビジネスモデルが研究され、称賛され、〇〇の成功の秘訣とか言う啓蒙本まで出て、ベストセラーになり、色々なビジネスマンがその本を読んで、自分の会社あるいは部署の参考にする。

マネジメントというものは、その理論によって成果が上がったかどうかだけが問題になる。その方法は、ある会社のある事業、ある時期のあるメンバーによって達成されたものであって、それが他の会社で適用された場合、「絶対」に上手くいくことを保証してはいない。

企業の役割は、そこで働く人が生き生きとして、世のため人のために優れた財・サービスを、豊富かつ安価に提供し続けられることである。いかに立派なビジネスモデルを構築しようとも経営の役に立たなければ無意味である。そして、それが他の会社に応用されたとしても、そこで応用された会社で成果を生まなければ、それもまた無意味でしかない。

ある会社のビジネスモデルは、ある時期の成功事例であって、その会社とて、時代や経営環境の変化を織り込んで、修正をかけていかなければ、無益なものとなる。上げるべき成果が上がらなくなったら、打開策を講じるべきである。

ちなみにドラッカーが『企業とは何か』(1946年)を書いた際に参考にしたのは世界最大最強の自動車メーカーGM(1930年代)であったが、その当時、アメリカ最大の市場シェアを誇り、世界最大の自動車メーカーとして繁栄した。しかしご存知の通り、2009年に連邦倒産法第11条を提供し、一度倒産している。ドラッカーがすごいことは、GMの経営を高く評価しつつも、GMは20年にもわたって成功してきたからこそ、見直しが必要であると主張していた。当然、GMはそのドラッカーのアドバイスなど聞く耳を持たなかった。

「私は、唯一無二の答えというものは信じない。いかなる答えにも間違いのおそれがある。しかも、経営政策を含め人間社会にかかわる事柄において重要なことは、正しいか間違いかではない。うまくいくかいかないかである」(『企業とは何か』)

ドラッカーは経営は人の手によるものだから、絶対はないのだと言っている。全てのものは少しづづ変化し、決して「絶対は絶対にない」と言い切っていたのだ。ここに信長とドラッカーが完全に重なって見える。

[教訓]

〇絶対は絶対にない。

〇上手くいっていたとしても必ず見直しは必要だ。むしろ上手くいっているときにこそ見直せ。

〇経営は人の手によるのだから、絶対があるわけがない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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