世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

部下の責任は上司の責任でしかない

主上が言った。「禍いは恨みから起こり、福は徳によって興るのが天道だと聞いている。百官の非行は朕の躬から出るものであるのに、いま秘祝の官は過ちを下の者に移している。これはかえって朕の不徳を明らかにするもので、朕のとらないところである。爾後、過ちを下に移すことは止めよ。」

(解説)
社内で不祥事が起こったときに、原因を作った部下を怒鳴り飛ばしても意味がない。もちろん業務上横領等解雇につながる問題を起こした場合は、就業規則に則って、しくしくと社内的続きを進めるが、対外的には速やかに対処しなければならない。事件や事故が起きてしまったときに、そのリカバリーをどうするかが大切である。そして「謝罪」「原因究明」「再発防止」に取り組む必要がある。

例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソンの「タイレノール」という鎮痛剤への毒物混入事件において、毒物混入で死者が出た直後、速やかにトップが記者会見を開き「謝罪」、まずは薬を飲まないようにと消費者に警告し、製品の回収と生産中止を決断、消費者の疑問に答えるためのホットラインを開設。「原因究明」を宣言。その後、生産再開時には「3層密封構造」という3重の安全包装への変更を行い、監視カメラの設置箇所や個数などの「再発防止」対策を事実ベースで公表。このような徹底的な対策とその広報活動で、信頼を取り戻した。

結局謝罪自体は、問題を起こした部下が行うわけにはいかない。あくまでも監督不行き届きということで会社のトップがしなければならない。部下のしたことで、とあくまでも他人事のように発言するときは、政治家はできるが、実業家はやってはならない。

初動対応を乗り切った後で、本格的に専門家の関与による調査や対応を進めていくことになるが、この時によくあるスキームは「第三者委員会」の設置による調査・検討である。社外の専門家に任せずに、社内の身で対応すると、隠蔽を疑われる危険があるし、イメージダウンもある。弁護士等の専門家が不祥事・自己の詳細な検討を行って、再発防止策を立案し、公表することになるであろう。

いずれにしても、問題を起こしたのが部下だからといって、トップは監督不行き届きだけで逃げないこと。あくまでも自分が起こしたことのような気持ちで謝罪や対応することが必要である。

[教訓]
〇部下の不祥事とはいっても、部下の責任にするな。部下の不祥事はトップの責任である。
〇リーダーは、過ちを自分で問題を起こした気持ちで謝罪や対応に当たること。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする