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会社は共存共栄のための組織である

「憎悪を同じくする者は助け合い、愛好を同じくする者は引き止め合い、真情を同じくする者は共に事を成就し、欲望を同じくする者はともに提携し、利益を同じくする者は互いのために死をも厭わないものであります。今呉王自らは、大王と患いを同じくするものと思っておられますが、願わくは時宜に従い、道理に従い、身を棄てて禍を天下より除きたいものであります。思うに、これもまた良い計画ではないでしょうか。」

弓高候は軍鐘・軍鼓を手に執り、膠西王を引見して、「王は軍事に苦しまれたが、王が出兵されたときの事情を聴きたいものである」と言うと、王は頓首しひざまずき、進み出ていった。
「鼂錯は従来、天子のあつい信認を頼んで独断専行し、高祖の法令を変えて、諸侯の領地を奪いました。卬らはこれを不義とし、彼が天下を壊乱するのを恐れ、呉・楚七国の兵を動かして、錯を誅しようとしたのです。いま錯はすでに誅せられたと聞き、卬らは謹んで兵を率いて帰った次第です。」
「王が真に錯を良くないと思われたのなら、どうしてそれを上聞されなかったのか。詔もないのに、虎符を持ってほしいままに出兵し、正義の国(斉)を撃っておられる。してみれば、出兵の真意は、錯を誅しようとされてのことではありますまい。」

(解説)
前段は鼂錯が諸侯の領土を削ろうと企んでいたため、呉王濞が膠西王の下に部下をやらせ、共闘することを伝えた。利害を共にする者がチームを組むのが良いという事である。これは経営陣も、そしてスタッフもである。一般に役員報酬と給与手当は反すると思われがちである。つまり従業員を安く働かせれば、役員報酬は増え、役員報酬を削らせないと給与手当は増えないものだ。さらに、不況下や会社の経営が傾いているときには、労働者天国である日本の場合は、解雇しづらいために役員報酬を削って給与手当を確保する必要も出てくるのが現実である。アメリカでは従業員は雇用の調整弁のような役割をはたしており、不況下では遠慮なく解雇させられる。この方が、景気は回復しやすい。日本の労働法制が景気の悪化を加速しているという現実がある。しかし本来ならば、会社の経営が右肩上がりになれば、お互いがメリットであるはずなのだ。また、逆に会社の経営が傾いたときには、よほどのことがない限り、経営陣だけの責任とは言えないことも少なくない。もちろん経営陣の私利私欲で会社が傾いたときは論外だが、コロナウィルス騒動を経営者の責任にするのは酷だろう。だから、その時は従業員も給料を柔軟に下げることに合意すべきである。それが共存共栄となる。会社がなくなったら生活費が稼げなくなる。困るのはむしろ従業員の方だろう。もう労働法制に胡坐をかいている事態ではない。それが従業員の首を絞めていることにそろそろ気づけ。

後段は、呉王濞も膠西王も破れ、呉王濞はその後、殺されたが、膠西王はいい訳に参った時の様子である。漢の弓高候にしてみれば、鼂錯が気に入らないならば、そういってくれという事なのだ。しかし、経営者の近くにいる役員の問題を指摘するのもまた至難の業である。但し、これは経営者に問題がある。社内の問題点を指摘しやすい仕組みにしておかなければならない。それが匿名でもいいと思う。いわゆる目安箱制度を導入することが、みんなのための経営につながるのだ。経営者も従業員にとってもみんなのための会社を作ることが、みんながハッピーになる秘訣である。その点、経営者と従業員はお互いの利益を取り合う存在ではなく、お互い利益を分け合う存在であるはずだ。後者の関係が築くことができれば、会社は長期間存続する優れた会社になりうるのである。

[教訓]
〇利害を共にする者達と作った組織は強固である。
〇経営者も従業員も利益を取り合う存在ではなく、利益を分け合う存在にならなければならない。そのように制度(報酬)設計をせよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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