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不都合があれば、解消するために消費者は買う

荘王は貨幣が軽すぎるとして小型から大型に改めたところ、人々はこれを不便がって、誰も仕事に励まなくなった。

楚の風俗では低い車が好まれた。王は低い車は馬車として不便であると思い、命令を出して車を高くさせようとした。宰相は、「たびたび命令が出ると、人民は従うところに迷うていけませぬ。もし王がどうしても車を高くしたいと思い召すなら、どうか村里の役人に命じて、里門の梱を高くさせたいものです。車を用いるほどの人は、みな君子で、しきりに車に乗り降りするわけにはまいらないのです」と言った。王は許可した。半年ばかり経つうちに、民は悉く自発的に車を高くした。これは教えないで民を感化される道で、近くの者はこれを見習い、遠くの者は四方より望んでこれに乗っ取るからである。

公儀休は・・・俸禄を受けている官吏には、下々の民と利を争うことを許さず・・・ある賓客が宰相に魚を送ったところ、受け取らなかった。他の賓客が「あなたは好んで魚を食べられると聞いているが、どうしてお受けにならないのか」と問うた。すると宰相は、「このんで魚を食べるからこそ、受け取らないのである。わしは今宰相として、自分で魚を買って食べるのに事欠かない・・・」と答えた。手作りの野菜を食べて上手かったので、自家の菜園の葵を抜き捨てた。また自家の手織りの布が見事なので、さっそく家婦に暇を取らせ、その機を焼き捨てて、「買うべき身分の者が買わなくては、農民・工女にその生産物をどこに売らせられようか」と言った。

(解説)
第一段目は、荘王の思い込みで、庶民が思い通りに動かなかったことを示している。

第二段目にも続き、これは孫叔敖が荘王に言った言葉である。王が自分の都合で命令を出して車を高くさせようとしたが、直接、車を高くせよと命ずるのではなく、高くさせるように仕向ければよいという事である。そうしなければ不都合が生じるようにすれば、直接命令しなくても、意図したとおりに人民は動くものだ。

マーケティングを考えても、買ってくださいとお願いしたって、誰も買ってくれるわけがない。だからこそ、これほしいなと仕向けることが大事である。マネジメントも同じく、ノルマを達成させるのではなく、ノルマを達成しないと自分の調子が悪くなる、あるいは達成することに喜びを感じさせるように仕向ければいい。

第三段目は、公儀休の言葉で、好きなものほど受け取るな。そして、購入する立場にいる者は、それを作る立場の者から仕事を奪わないようにせよ、ということだ。お金を払える立場にいるのであれば、ガンガンお金を払ってあげて、人に報酬を与えた方が良いのだ。何でもできるからと言って自分でやるべきではない。魚を金に変えてみよう。政治家や官僚は、金が欲しいからこそ自分は受け取らない。どうせ報酬として受け取っているのだから、賄賂などを受け取っても仕方がない。そう言える社会になって初めて、民主主義と言えよう。日本は全然ダメなことに気づく。

[教訓]
〇直接命令したり、お願いするな。自分がしてほしいように仕向けよ。
〇好きなものほど受け取るな。お金を払える立場にいる者は、さっさと払って、他人に仕事をさせてやれ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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